【興論その1】顧客軽視を続けた政界には猛反省を!真に国民本位の政治へ。 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

【興論その1】顧客軽視を続けた政界には猛反省を!真に国民本位の政治へ。

(このブログではすでに経済論を中心に【ニッポン興国論】を連載していますが、それとは別に、政治や社会現象なども含めて、広い視点からその時々の議論を興すという趣旨で、【興論】のコーナーを設けることにしました。)

●今回の「政局」劇で見えたもの

 今回、自民党が「社会保障と税の一体改革」の三党合意を反故にしてでも内閣不信任や問責決議に動こうとしたことで起こった政界劇は、国民にとって一体、何だったのだろうか。

消費税率引き上げという、国政の最重要課題をどうするか、それについて各政党はいかなる態度で臨むのか、これは、今なすべき政治の最大の仕事だったはずだ。それよりも政権奪取をめぐる党利を優先したのは、政界の職務放棄にほかならなかったのではないか。

政治を、「国益」という価値を生み、それを提供し保証するサービス産業だとみなせば、その顧客は国民である。何が国益であり国民の利益であるかを顧客である国民に説明し、その合意を得るのが選挙であり、その後は、支持を得た政党が国民に約束したサービスの提供に全力をあげる責務を負う。

当然、そこにはサービス内容について異なるメニューを持った競争相手がいる。それが野党である。国民にとって大事なのは、どの党がどのようなメニューを提供しようとしているかだ。それが明確であることによって、次の選挙では、顧客すなわち国民本位でサービス内容の選択ができることになる。

今回の一体改革について衆議院では法案に賛成し可決させていた野党自民党は、消費税率引上げに賛成するというメニューを国会の場で示していた。そのメニューよりも、解散総選挙を突然優先させるのは、国民にサービスを提供することよりも自分たちが政権をとるという私益を優先させたことになる。顧客をないがしろにしてでも自社の発展を図ろうとした会社という図式になってしまった。

●顧客を欠陥商品で騙すのが選挙なのか。

そもそも、政治が自分たちサービス供給者側の都合ばかり優先して、顧客を大切に扱っていない、このことが今日の政治の崩壊現象につながっているように思う。

民主党は、国の財政について、つじつまの合わないメニューをマニフェストとして示す人気取りをして、09年の総選挙で政権をとった。そこには、同党が掲げる新規施策の財源16.8兆円は消費税を上げなくてもムダの削減などで可能だと書いただけで、消費税は上げるとも上げないとも書いていなかった。

ましてや、財政のつじつまを将来に向けてどう確保していくのか、およそ政権をめざす政党として示すべきだったメニューは一切、示していなかった。

これは、最初から欠陥商品を顧客に売り込んでいたわけで、政権をとって、それが欠陥商品だったことが明らかになってから、民主党政権は消費税増税という新たなメニューを付け加えた。「詐欺フェスト」だったと言われても仕方ない。

ただ、今回の一体改革の法案は将来の税率引上げを法定したものであり、商品メニューの変更について必要な顧客との合意の取り直しの機会は、実際に引上げがなされる前の総選挙というタイミングになる。

その理屈は良いとしても、顧客からみれば、欠陥商品で騙してでも政権という権力がほしかったのだという、顧客軽視の姿勢が民主党という会社から伝わっていたことになる。

●政界という業界は、その本来の仕事に立ち返れ。

自民党は前述のとおりだが、では、今回、消費増税に反対して内閣不信任案を出した「中小野党」はどうだったのだろうか。

消費増税の問題を挙げ、反対の姿勢を顧客たる国民に明確化したのは良いとしても、もはや5%程度の消費増税なくしては、日本の社会保障や財政、経済運営はつじつまが合わなくなっているのも事実だ。それについて、15年度までの消費増税なくしても、つじつまの合う全体像を数字で示さなければ、顧客たる国民にサービスメニューを提示したことにはならないのではないか。

メニューをきちんと書くと、16年度以降であっても、いずれ消費増税は必要だと言わざるを得なくなるから、メニューは書こうとしないのか。いずれにしても、これも真に顧客を重視した姿勢とは思えない。

結局、政界全体が国民の利益とは無関係な党利(自社の利益)を求めて動く、権力亡者、政権亡者の業界に過ぎないと、国民には見えてしまう。

「真善美」という言葉があるが、この業界はすべてが逆だ。真実を語らず、私益のためにウソや詐欺など不善を平気でなす、醜い集団だということになる。

いま世の中では、これまでの供給者視点で組み立てられた「戦後システム」を、エンドユーザーである消費者、つまり顧客視点で組み替えることが強く求められている。顧客を起点にして、彼らに価値を提供し保証するものとして「社会システム」が再定義されようとしている中にあって、政界も徹底的に、顧客たる国民視点へと立ち返るべきだろう。

それは、提供しようとするサービスメニューについて「真善美」を尽くすことではないか。「欠陥商品でも売れれば勝ち」ということではないし、顧客に提示したメニューの明快さをかなぐり捨ててでも、自社の権力という供給者側の満足を指向することでもない。

私利私益追求に成り下がったかにみえる政界という業界全体の出直し的刷新のために、真実を語り、顧客に対する責任を果たすことを最優先とする本物の「第三極」が立ち上がることが期待される。

●総選挙は違憲状態を解消してから。

それはさておき、顧客軽視を続けてきた政界として考えなければならないことがある。それは、最高裁から違憲判決の出た衆院小選挙区の「1票の格差」の是正だ。少なくとも違憲状態は是正しなければ、解散総選挙はすべきでない。

現行の違憲状態でいくら「首相の解散権は制約されない」としても、また、国会がその是正に向けた努力さえしておけば選挙後に違憲判決は出ないと予想されるとしても、それは総選挙をやろうと思えばできないことはないと言っているだけだ。実際に解散をすれば、それは、司法を軽視するとの立場を立法府が明確にとることを意味することになる。

 これは司法に対する挑戦であり、三権分立を踏みにじるものであると同時に、顧客軽視の姿勢そのものでもある。今の違憲状態は、まさに顧客である有権者が政治と関わる根幹部分で、有権者の権利を軽視したものだからだ。その中で解散を打つのは、「国民不在」の象徴であって、そもそも解散を求める姿勢そのものがおかしかった。

顧客をないがしろにしてきた政界という業界全体が反省し、その償いとして、せめて必要な法案を成立させ、選挙区の区割りをきちんとしてからの解散総選挙にすべきなのではないか。

 周知期間も入れると、法案成立後、数か月を要するとされるが、この手続きをきちんと丁寧に行えば、年内解散も困難になると言われる。そうであっても、「まずやるべきことをやってから」というのは、消費税の問題だけではないはずだ。

 顧客の信を取り戻すために、政界には最大限の汗をかいてほしいものである。