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松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、重度の子宮頚管狭窄症に対して、腹腔鏡を用いて腹腔内から子宮体部を通じて子宮頸管を拡張した症例報告です。

 

Fertil Steril 2024; 121: 890(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.02.005

要約:子宮頸部の局所浸潤性高分化扁平上皮内癌のためループ電極による切除術を実施した、妊娠歴のない35歳の女性が、重度の頚管狭窄をきたして来院されました。外来で実施可能な従来の頚管拡張法では子宮腔内に到達できず、全て偽腔から腹腔内へ到達するルートになってしまいました。このため、腹腔鏡を用いて腹腔内から子宮体部を通じて子宮頸管を拡張する方法を行いました。

1 5mmのトロッカーを4ヶ所から挿入

2 子宮底部から子宮腔内へ子宮筋層を貫いてモノポーラーで穴をあけ、穿刺部位周囲に糸をかけ牽引

3 メチレンブルー溶液を子宮腔内へ注入し、両側の卵管通過性を確認

4 子宮腔内から子宮頚管を経由して膣内へガイドワイヤーを通す

5 膣から、ガイドワイヤーを通じて子宮腔内へ、徐々に太いカテーテルを通していく

6 24Frまで拡張できたところで、フォーレイカテーテルを膣から子宮腔内へ挿入し固定

7 子宮筋層を縫合し、オペ終了

 

術後の子宮卵管造影は問題なく、初回胚移植で妊娠し、24週で出産(早産)しました。

 

 

解説:本論文は、重度の子宮頚管狭窄症に対して、腹腔鏡を用いて腹腔内から子宮体部を通じて子宮頸管を拡張した世界初の症例報告です。膣からのアプローチでは子宮内の偽腔に入ってしまうような場合に、子宮体部からのアプローチで頚管を通す試みです。目から鱗のような方法で、実践に即した方法です。