Q&A4394 第12因子活性低下 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 初診の時の検査で、不育症のものも行う方針のクリニックに通っています。一年半前に通い始めた際の不育症の検査で第12因子活性が35%でした。その他凝固系や抗リン脂質抗体系のものはとくに引っかからず、第12因子活性のみやや低いだけです。人工授精で妊娠した時にアスピリンとヘパリンを併用したのですが、稽留流産になりました。その後は人工授精で化学流産、体外受精で化学流産となってます。化学流産となった時にはアスピリン、ヘパリンは使用してません。
 
クリニックの方針で、不育症の検査で何かしら引っかかった場合はヘパリンとアスピリン併用するそうなのですが、色々調べてみるとアスピリンのみで十分だとお考えのクリニックもありました。オーバーすぎる治療なのか、やる意義のある治療なのか分からなくなりました。クリニックの若手の先生に聞くと、ヘパリンまでは必要ないと思うともおっしゃっていたり、何も治療しなくても大丈夫とおっしゃっていたりと、不安になりました。今後妊娠した場合どうしたらいいのかなと思ってしまってます。不要な治療はしたくないのですが、そのせいで流産になってしまったらどうしようとモヤモヤします。

 

A 不育症検査で実施している項目は「リスク因子」であり「原因」ではありません。リスク因子があっても(無治療で)問題ない方もおられる一方で、治療しなければ赤ちゃんを授かることができない方もおられます。血液凝固第12因子は(タンパク質の連続した反応である)血液凝固カスケードにおいてブレーキの役割を担っています。第12因子活性が低下した場合はブレーキが故障した状態で、どんどんアクセルが踏まれた状態になり、血液凝固カスケードが亢進します。ヘパリンはこの血液凝固カスケードを抑制しますが、アスピリン(バイアスピリン)は血小板機能を抑制しますので、理論的にはヘパリンしか効かないはずです。しかし、アスピリン(バイアスピリン)のみで有効であるとする論文が存在するのも事実です。このギャップについて私は、アスピリン(バイアスピリン)のみで有効な方は、本来治療が必要でなかった可能性があるのではないかと考えています。

 

質問者さんの場合には、アスピリンとヘパリンを併用した時に最長の妊娠期間が維持できていますので、両方使った方が良いと思いますが、不育症検査を全て網羅できているかどうか、あるいは原因不明不育症の可能性も視野に入れておくことも必要だと思います。

 

なお、このQ&Aは、約2〜3週間前の質問にお答えしております。