本論文は、妊娠中と出産後のチョコレート嚢胞の変化に関する検討です。
Fertil Steril 2025; 123: 211(スウェーデン)doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.08.355
要約:2013~2024年にスウェーデンのひとつの大学病院で、チョコレート嚢胞を有する妊婦57名を対象に、妊娠中は毎月、出産後は3か月後と12か月後に超音波検査を行い、その形態変化(種類、内容、脱落膜化)について前方視的に検討しました。チョコレート嚢胞の縮小は42名(74%)で認められ、平均妊娠22週から縮小しましたが、固形部分は増大しました。脱落膜化は33名(58%)で確認され、脱落膜化の時期は平均妊娠17週で、出産後に消失しました。
解説:妊娠初期の卵巣腫瘍合併率は11%で、子宮内膜症は1.4%に認められます。妊娠中のチョコレート嚢胞は、黄体ホルモンの影響により、血管が豊富な固形成分の形成、脱落膜化を起こすことがあります。脱落膜化したチョコレート嚢胞の超音波所見は、境界悪性腫瘍または浸潤性悪性腫瘍の所見と類似していますが、通常は出産後に退縮します。妊娠中のチョコレート嚢胞の自然経過を知ることは、子宮内膜症を悪性腫瘤と誤分類するリスクを減らすために重要です。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、妊娠中と出産後のチョコレート嚢胞の変化を前方視的に検討したところ、3/4で縮小し2/3で脱落膜化がみられますが、脱落膜化は出産後に消失することを示しています。したがって、出産後のフォローアップ超音波検査が、チョコレート嚢胞の良性を再確認するのに役立ちます。