本論文は、母体の耐糖能異常と胎児奇形に関する大規模な出生コホートを用いた検討です。
Hum Reprod 2024; 39: 2816(米国、イスラエル)doi: 10.1093/humrep/deae233
要約:イスラエルの大規模出生コホート(MHS)の中で、妊娠前90日以内あるいは妊娠初期140日以内のHbA1c検査結果があり、2001~2020年に生まれたお子さん46,534名を対象に、出産したお子さんの奇形の有無を後方視的に検討しました。交絡因子を除外してなお、お子さんの先天性心疾患リスクで有意差のみられた項目は下記の通り(赤字表示)。
オッズ比(95%信頼区間)
糖尿病なし 基準
妊娠前後のHbA1c>5.6% 2.06(1.14〜3.74)
既存の母体2型糖尿病 1.89(1.18〜3.03)
解説:妊娠前からある既存の母体糖尿病はお子さんの胎児奇形と関連することが明らかになっています。しかし、妊娠前後の高血糖やさまざまな臓器の感受性については賛否両論があります。本論文はこのような背景の元に行われ、イスラエルの大規模な出生コホートを用いています。母体の妊娠前後のHbA1c>5.6%はお子さんの先天性心疾患のリスクが有意に増加すること、既存の母体2型糖尿病はHbA1cや血糖値が正常でもお子さんの先天性心疾患のリスクが有意に増加することを示しています。後者の事実は、お子さんの先天性心疾患リスクを増大するメカニズムが、母体の血糖値とは無関係に機能している可能性があることを示唆しています(つまり、別のメカニズムが存在する)。今後の検討が待たれます。