本論文は、卵巣予備能低下女性(AMH 1.2未満)では、主席卵胞率が少ない方が良い(卵胞が揃っていない方が良い)ことを示しています。
J Ova Res 2024; 17: 179(中国)
要約:2016〜2022年にアンタゴニスト法で卵巣刺激を行ったPOSEIDONグループ3及び4(AMH 1.2未満)の女性(それぞれ593名と563名)を対象に、主席卵胞率(トリガー日の18mm以上の卵胞/12mm以上の卵胞)に基づいて2群(≤40%と>40%)に分け、採卵成績、培養成績、新鮮胚移植による妊娠成績を後方視的に検討しました。主席卵胞率が高い群は、低い群よりも、採卵数、分割胚数、移植可能胚数が有意に減少していました。同様に、主席卵胞率が高い群は、低い群よりも、臨床妊娠率と出産率が有意に減少していました。しかし、初回凍結胚移植の妊娠成績には有意差を認めませんでした。POSEIDONグループ3では、主席卵胞率が高い群は、低い群よりも、累積臨床妊娠率と累積出産率が有意に減少しており、主席卵胞率の増加に反比例して累積出産率が低下しました。しかし、POSEIDONグループ4では、その有意差は認められませんでした。その代わりに、ロジスティック回帰分析により、加齢と採卵数低下がグループ4の累積出産率低下に影響を与えていることが判明しました。
解説:世界的に広く用いれている採卵のトリガーの基準は、17mm以上の卵胞3個以上、あるいは18mm以上の卵胞2個以上です。しかし、実際はより多くの成熟卵を得るために、可能な限り多くの主席卵胞の発育を目指し、トリガーを遅らせることがしばしばあります。このアプローチは広く普及していますが、卵巣予備能低下女性における最適なトリガーの時期に関するコンセンサスは得られていません。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、最適なトリガー時期を評価するための客観的な指標とされている「主席卵胞率」を基準として、採卵成績、培養成績、妊娠成績を後方視的に検討したものであり、卵巣予備能低下女性(AMH 1.2未満)では、主席卵胞率が少ない方が良い(卵胞が揃っていない方が良い)ことを示しています。また、サブグループ解析から、POSEIDONグループ3では主席卵胞率≤40%を目標とし、グループ4では採卵数増加を目指すのが得策です。
*POSEIDONクライテリア2016(Patient-Oriented Strategies Encompassing IndividualizeD Oocyte Number)(Fertil Steril 2016; 105: 1452)
POSEIDON 1群:35歳未満、AFC 5以上あるいはAMH 1.2以上
1a群:卵巣刺激での採卵数3個以下
1b群:卵巣刺激での採卵数4〜9個
POSEIDON 2群:35歳以上、AFC 5以上あるいはAMH 1.2以上
2a群:卵巣刺激での採卵数3個以下
2b群:卵巣刺激での採卵数4〜9個
POSEIDON 3群:35歳未満、AFC 5未満あるいはAMH 1.2未満
POSEIDON 4群:35歳以上、AFC 5未満あるいはAMH 1.2未満