子宮筋腫と妊孕性について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

今月号のFertil Steril誌の「Views and Reviews」は、子宮筋腫と妊孕性についてです。

 

①Fertil Steril 2024; 122: 6(ベルギー、イタリア)doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.02.048

要約:子宮筋腫の有病率は、民族、年齢、初潮年齢、既往出産回数によって異なります。子宮筋腫のリスク因子として、女性年齢、人種、初潮の早さ、出産回数、肥満、高血圧、喫煙、カフェイン、アルコール、内分泌かく乱化学物質、遺伝子変異が報告されています。一方で、子宮筋腫増殖抑制に作用するビタミンDも注目されています。

 

②Fertil Steril 2024; 122: 12(スペイン、イタリア、フランス)doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.05.003

要約:子宮筋腫の数と位置関係を診断するためには、感度と特異度が高くコストが低くアクセスが容易である経膣超音波を中心にさまざまな補完ツールを使用することが重要です。一方、複数の子宮筋腫(>4個)、大きな子宮(>375cm3)、子宮腺筋症、悪性腫瘍の疑いがある場合にはMRIが優れています。生理食塩水注入超音波ソノヒステログラフィー、エラストグラフィー、造影超音波検査などの新しい技術や、人工知能を用いた診断の可能性も今後広がるものと考えられます。

 

③Fertil Steril 2024; 122: 20(イタリア、スペイン、フランス)doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.04.041要約:子宮筋腫の約30%では生活の質と女性の健康に悪影響を及ぼし、鉄欠乏症性貧血子宮出血過多月経を引き起こします。現在の治療戦略は外科的な切除(子宮筋腫摘出術、子宮摘出術)であり費用がかかります。薬物療法として、非ステロイド性抗炎症薬トラネキサム酸などの対症療法、経口避妊薬、GnRHa製剤による偽閉経療法 、子宮内レボノルゲストレル、選択的プロゲステロン受容体モジュレーター、アロマターゼ阻害薬などの選択肢があります。また、子宮動脈塞栓術(UAE)、高密度焦点式超音波(FUS)、磁気共鳴誘導式焦点式超音波、高周波アブレーションなども考慮されます。治療には、臨床プロフィールと筋腫の特徴(位置、大きさ、多発性筋腫、腺筋症の有無)、患者の希望、挙児希望の有無に基づいて個別化されるべきです。

 

④Fertil Steril 2024; 122: 31(ベルギー、米国、フランス)doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.02.049

要約:子宮筋腫による着床障害(子宮内膜受容能低下)の原因として、子宮腔のゆがみ、子宮内膜および子宮筋層への血液供給低下、子宮収縮の増加などが考えられます。さらに、子宮筋腫の存在により、グリコデリン、BMP受容体2、IL10、LIF、細胞接着分子など着床に不可欠なサイトカインの減少が生じます。また、アンタゴニスト製剤(エラゴリクス、レルゴリクス、リンザゴリクス)による治療の可能性が示唆されています。

 

Fertil Steril 2024; 122: 4(ベルギー)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.05.144

コメントでは、子宮筋腫は35~50歳の50%以上が罹患してており、女性で最も多くみられる疾患であるため、今回のViews and Reviewsを企画したとしています。