本論文は、IVM(in vitro maturation、未熟卵体外成熟培養法)は5%O2が良いことを示しています。
Fertil Steril 2024; 121: 615(フランス)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.12.014
要約:2016〜2021年に妊孕性温存を目的としてIVMを受けた143名の女性を対象に、20%O2群と5%O2群の2群にランダムに分け、24時間および48時間後の卵成熟および卵形態について評価しました。なお、年齢中央値は31.4歳、AMH 3.2 ng/mL、胞状卵胞数(AFC)27.2個、採卵あたり10.7個の卵子が回収され、6.1個(成熟率57.3%)の成熟卵が獲得でき、卵子凍結を行いました。結果は下記の通り(有意差のみられた項目を赤字表示)。
5%O2群 20%O2群 P値
卵子数 864個 864個 〜
卵成熟率 57.9% 56.8% NS
卵形態スコア 3.44 > 3.16 0.014
解説:IVMは1939年に初めて実施され、当初は多嚢胞性卵巣症候群の方のために行われていましたが、現在は妊孕性温存にも広く用いられています。IVMのメリットは、生理周期のいつでも実施できることですが、卵成熟率は約60%止まりでそれほど高くありません。卵管内や子宮内のO2濃度は2~8%であり、ヒト受精卵では20%O2よりも5%O2での培養成績が良好であることが報告されています。一方、IVMは研究段階にあり未だ標準化されていません。IVM由来の卵は、遺伝子発現パターン、細胞小器官、膜構造、減数分裂の早期再開、発生能低下など、最適な卵とはいえないためです。このような経緯の元に本論文の検討が行われ、IVMにおいても5%O2が良いことを示しています。