最近読んでよかった本 187 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった本を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

私のブログでは月2回本の紹介をしています。

何故本を紹介しているかについては、2016.9.29「「最近読んでよかった本」の新たな効能?「ニュートラルな気持ち」へ!」をご覧ください。

 

 

「田舎の紳士服店のモデルの妻」宮下奈都

都内で素敵な旦那さんと「いい」幼稚園に通う2人の息子と暮らす、美人の奥さんの「梨々子」。しかし、素敵だった夫がうつ病になって退職し、夫の郷里の北陸で暮らすことになったのだ。田舎での生活、他の子と違う子どもたちの成長、夫の体型などの変化、あこがれのアイドルなど、その10年を2年毎に描いた物語。グランフロント大阪紀伊國屋書店の店員さんお勧めの本です。
 
 
「屍人荘の殺人」今村昌弘
神紅大学ミステリ愛好会の「葉村譲」と会長の「明智恭介」は、映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女「剣崎比留子」と共にペンション紫湛荘(しじんそう)を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、近くで開催されていたイベントへのテロ攻撃により発生した多数のゾンビたちに追いかけられる羽目になり、紫湛荘に閉じ込められる。このクローズドサークルで、部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。その後も第二第三の殺人が起こり、そこはまさに屍人荘(しじんそう)。外にはゾンビ、中には殺人犯という究極の恐怖の中で、生き残り謎を解き明かせるのか。とても面白い作品です。第27回鮎川哲也賞受賞作、映画化されました。
 
 
「卒業のための犯罪プラン」浅瀬明
ビジネスセンスを備えた人材の育成を目指す「木津庭商科大学」では、学食等での支払いのみならず、家賃の支払いや単位の売買にも使用できる「ポイント」を獲得するため、学生たちがしのぎを削っていた。大学のサークルは、共通の趣味のために存在するのではなく、事業を行うために存在していた。そう、「ポイント」を貯めれば、飛び級で卒業できるのだ。家庭の都合により、あと半年で卒業しなければならなくなった2年生の「降町歩」は、不正にポイントを稼ぐ者たちを摘発する「監査ゼミ」に所属し、大逆転を狙う。家庭教師サークルを装ったガールズバー、自主制作の漫画を売るという名目で現金でポイントを買うなど、騙し騙されのコンゲーム。降町は卒業できるのか?2024年第22回「このミステリーがすごい!」大賞文庫グランプリ受賞作。メチャメチャ面白いです。
 
 
「動機探偵」喜多喜久
令王大学の准教授「名村詩朗」は人工知能(AI)の研究者。AIをヒトへ進化させるため、ヒトの心の「なぜ」を解きあかそうとしていた。特任助手の「鈴代若葉」とともに、不可解な事件の謎に挑む。遺品の日本刀、慣れない登山での事故死、突然の婚約破棄、息子に殺人の罪をなすりつけた父親など。いわば、Dr.キュリーの人工知能版です。
 
 
「東京ダモイ」鏑木蓮
東京の出版社に勤務する「槙野英治」は、京都府綾部市の「高津耕介」から、60年前のシベリア抑留経験を俳句にした自費出版の依頼を受ける。槙野はすぐに綾部の田舎にある高津宅を訪れ、全国紙の広告と自費出版を500万円で請け負う。数日後、残りの原稿を受け取りに再訪するが、高津は置き手紙を残して姿を消していた。その日の新聞に、ロシア人女性「マリア・アリョーヒナ」が舞鶴港で水死体で見つかったことが書かれており、高津が舞鶴にマリアの死を確認に行ったことが判明する。しかし、高津はマリアの死を確認した後、行方がわからなくなっていた。当時のことを綴った高津の俳句が事件をつなぐ手がかりとなり、出版社の槙野とその上司「朝倉晶子」、京都府警の「志方育夫」「大月学」が俳句の謎を解明すべく躍起になる。俳句が事件解決の鍵になるストーリーは斬新で、俳句を紐解いていく流れは秀逸。「ダモイ」はロシア語で「帰還」を意味する。日本に帰ることを夢見た捕虜たちの姿は、悲しく切ない。鏑木蓮のデビュー作で、2006年第52回江戸川乱歩賞受賞作です。