Q&A3934 35週、骨盤位です | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2023.10.2「Q&A3802 現在妊娠中、出産の件で相談」でお世話になりました。その続きとなります。

リプロ東京を卒業し、現在35週になりました。膠原病からくる妊娠高血圧症の予防投与していた低用量アスピリンも28週で飲み終わりました。SSA抗体陽性ですが胎児心ブロックもなく、妊娠経過良好できてます。チョコレート嚢腫も破裂時8センチでしたが、現在は2センチ程度であり、筋腫も問題ないとのこと。

1つ問題があると言うならば、胎児がずっと横位で、現在は骨盤位のままであること。帝王切開の分娩になるのかな…と思っていました。そしたら、私の通院している病院は、大学病院であり、周産期センターもあり、実績や体制上、骨盤位経膣分娩も可能とのこと。帝王切開は安全なオペだけど、されどオペでありリスクがある。経膣でいけるなら母体の回復が違うと、むしろ経膣分娩推しな感じの説明を受けました。この説明を聞いて、母も夫も経膣分娩の方がいいのではと、言ってます。最後に決めるのは、どんなお産にしたいかは、私の希望とのことですが、骨盤位の帝王切開が主流となる現代に、考えてもいなかった骨盤位経膣分娩の選択に戸惑ってます。グダグダ考えがまとまらない私に対して夫は、ドクターを信じるしかないよ。骨盤位経膣分娩できる病院なんて少ないからラッキーだね、と前向きに言ってくれます。前回相談した、帝王切開で内膜症の処置して一石二鳥だなんて考えは、もうどこかに消えてしまいました。松林先生も自ら医療処置が加わる帝王切開よりも経膣分娩的な回答でしたね。


今回のケースでは、松林先生ならどう選択した方がいいですか?と質問しても、私の通院する大学病院がどの程度の実績と体制なのか分からないので、判断しようがないので困った質問になってしまいますよね…。おそらく、こんなに考えがまとまらないのは、骨盤位経膣分娩の情報が少なくて、私の中で決定打となるものがないからなのではと思っております。何を重視して分娩選択していくのがベストだと思いますか。

 

A 骨盤位経膣分娩は経験の差がものを言うと思います。つまり、たくさんの症例を経験している医師がいる病院であれば、骨盤位経膣分娩を考慮する際に、事前の評価をしっかり行なって、間違いなく骨盤位経膣分娩できるとの判断の元に実施しますから、安心してお産に臨むことができます。しかし、極端な話、1〜2例しか経験のない医師では、緊急事態が生じた際の咄嗟の判断ができない可能性がありますので、そのような場合には骨盤位経膣分娩をお勧めできません。

 

私がひとつ気になるのは、頭位ではなく、なぜずっと横位や骨盤位のままなのかという点です。赤ちゃんは頭が重いので重力の関係で自然に頭位になるはずです。頭位になれない理由が子宮の形や骨盤の形、あるいは臍帯の長さに起因するのであれば、経膣分娩は難しいと思います。