腟形成術に関する系統的レビュー | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、腟形成術に関する初めての系統的レビューです。

 

F&S Rev 2023; 4: 219(オランダ)DOI:https://doi.org/10.1016/j.xfnr.2023.10.002

要約:2022年10月までに発表された腟形成術に関する52論文を対象に、系統的レビューを行いました。内訳は、M to F性同一性障害35論文、Mayer–Rokitansky–Küster–Hauser症候群(MRKHS)17論文です。下記の4点を重要なポイントとして記載します。

1 本論文は腟形成術に関する初めての系統的レビューであり、9つの術式のどれを選択するか、患者さんに具体的なイメージを提供できる可能性があります。

2 複数の術式の選択により、合併症率が低く、満足度が高く、QOLが向上する可能性があります。

3 論文により術後の評価法が異なるため、標準化された評価法が必要です。

4 術式の選択は依然として、根拠ではなく、経験に基づいています。

 

性同一性障害患者では、出血、壊死、脱出、狭窄、消化器症状、再置換術、痛み、分泌物、後悔、便及び尿路系の問題が生じ、MRKHS患者では、壊死、狭窄、分泌物、脱出が生じました。両者ともに、性行為と性交疼痛症は患者による個人差が大きくなっていました。なお、MRKHS患者は新しい腟の出来栄えに満足していました。

 

解説:オランダでは、M to F性同一性障害およびMayer–Rokitansky–Küster–Hauser症候群(MRKHS)の約20%に膣形成術が行われています。腟形成術の手技は急速に進化しています。本論文は、腟形成術に関する初めての系統的レビューであり、現在のところ、理想的な腟形成術は特定できず、術式の選択は依然として、根拠ではなく、経験に基づいていることを示しています。患者ごとの手法の工夫は、将来の進歩と患者の意思決定に重要な役割を持つだろうとしています。