本論文は、流産後の子宮内遺残に対する、子宮鏡下細切術(HM)と電気真空吸引法(EVA)の違いを検討したランダム化試験です。
Fertil Steril 2023; 120: 1243(オランダ)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.08.956
要約:2015〜2022年に4つの病院で、流産後の子宮内遺残(1~4cm)を有する133名を対象に、子宮鏡下細切術(HM)と電気真空吸引法(EVA)にランダムに分け、治療成績を前方視的に検討しました(非ブラインド試験)。HMはTruClear Systemを、EVAは8〜10mm のKarman Cannula(プラスチック製)を用いました。結果は下記の通り、全ての項目で有意差を認めませんでした。
HM群 EVA群
手術時間中央値 7.2分 5.8分
完全除去率 95.2% 82.5%
追加子宮鏡治療 12.5% 32.8%
術中合併症 5.5% 5.0%
術後合併症 2.7% 1.3%
術後子宮内癒着 14.3% 20.6%
解説:流産後の子宮内遺残は、およそ妊娠17件に1件の確率で発生します。経過観察で改善しない場合には、外科的切除が必要となります。通常の子宮内掻爬のリスクとして、出血、子宮穿孔、感染、子宮内癒着があります。掻爬に変わる方法として、子宮鏡下細切術(HM)、子宮鏡下コールドループ術(TCR)、電気真空吸引法(EVA)があります。HM vs TCRではHMの手術時間が短縮されるというランダム化試験が報告されていますが、EVAとの比較によるランダム化試験は実施されていませんでした。本論文はこのような背景の元に行われた研究であり、流産後の子宮内遺残において、HMとEVAに有意差は認められませんでしたが、HMは EVAより完全な除去が可能で、術後の子宮鏡治療の必要性が減少することを示しています。なお、日本では、プラスチック製の吸引管による手動真空吸引法(MVA)が行われていることが多いです。