Q&A3882 産後うつの予防策は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q この度、第二子を6年ぶりに出産しました(第一子は20代後半でタイミング、第二子は30代前半で自然妊娠)。

第一子のときは産後4日目からマタニティーブルーが長引き(不眠、食欲減退)、ホルモンバランスの乱れからか体温調節もうまく行かず4ヶ月ほど辛い思いをしました。今回は産後1ヶ月までは何もありませんでしたが、3日連続の夜泣きで寝れなかったのを機に、また不眠と食欲減退になり、産後うつになってしまいました。今回も体温調節がうまく行かず、12月というのに半袖で過ごす次第です。心療内科でもらった薬を飲んでもうまく眠れない状態です。第三子も希望しているのですが、2回ともマタニティーブルーと産後うつを経験していると怖くて踏み切れません。体質や性格の影響も大きいと思いますが、産後のホルモンバランスの乱れの防止策や、産後うつになりなくい方法はないのでしょうか。

 

A マタニティーブルーは産後3〜10日以内に始まり、産後2週間以内に治る一過性の抑うつ状態です。また、産後うつ病は産後1ヶ月以内に発生するうつ病と定義されます。米国では「産後うつ病予防プログラムROSE」が2001年に発表され広く実施されています。日本では、2010年頃から様々な「産後うつ病予防プログラム」が実施されていますが、ROSEプログラムは2023年の科学研究費を獲得した山口大学で行われているようです。

 

周産期うつ病の予防法、治療法については、患者さんを取り巻く環境や医療環境が異なるため、個々の状況に応じて対応する必要があります。以下に列記しますが、それぞれ担当する医療者によって方法が異なりますので、一概に「この方法が良いです」とは言えませんし、具体的な方法も医療者によって異なります。

 

軽症〜中等症の場合

 認知行動療法(CBT)

 対人関係療法(IPT):ROSEプログラムなど

 地域介入プログラム:長野県須坂市の取り組みなど

 自助的ケア:電話支援など

 支持的カウンセリング

 運動、ヨガ

 

中等症〜重症の場合

 抗うつ薬(胎児、新生児へのリスクを考慮)+精神療法

 

産後うつ病には、SSRIや三環系抗うつ薬が有効ですが、母乳にも分泌されます。しかし、妊娠中に服用した薬剤が胎盤から胎児へ移行する量よりも少なく、母乳では10%以下となります。したがって、授乳を中止する必要はないということになっています。薬物治療は治療後6〜8週間程度かかるようですので、もしかすると妊娠中から使う必要があるかもしれません。そうなりますと、新生児遷延性肺高血圧症新生児薬物離脱症候群のリスクも生じます。心療内科よりも精神科でご相談される方が良いと思います。また、分娩に際しては、精神科と産科の連携が必須です。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。