Q&A3824 最適な移植方法について迷っています | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 42歳、AMH 0.53


A病院
2021.7 新鮮胚移植→陰性


B病院
2021.12 ホルモン補充周期で凍結胚移植 5日目胚盤胞4BC (ハッチング後5BC)不育症検査なしで移植日からバファリン服用→BT9 hCG135→8週心拍確認前に稽留流産
 

2022.2 卵管造影検査で片側卵管閉鎖が発覚

C病院
2022.11 ホルモン補充周期で凍結胚移植 5日目胚盤胞4AB(ハッチング後6AB)→BT7 hCG19→化学流産

不育症病院にて
2023.2 不育症検査:ループスAC(APTT)50.7→バファリン服用指示

2023.4 ホルモン補充周期で凍結胚移植 6日目胚盤胞4BC(ハッチング後6BC)移植日からバファリン服用→陰性

※2023.8 慢性子宮内膜炎検査 陽性7/10HPFs→ビブラマイシン服用→再検査予定

今までなかなか胚盤胞にならず治療歴は2年以上ですが移植は4回のみ(うち着床は2回)です。また凍結胚移植をホルモン補充周期でしかやった事がなく(B病院は診療日の都合、C病院は自然周期予定でしたがコロナ感染後ホルモン値がみだれキャンセルになったため、次週期に年齢もありホルモン補充になりました)ホルモン補充周期で着床はしているものの出産までには至っていません。

①着床のみでもホルモン補充周期での移植が私には必勝法になるのでしょうか。自然周期やレトロゾールでの移植にもチャレンジしたら結果も変わるのではと思うのですが、年齢もあるのと保険移植が残り1回のため迷っています。
②B病院とC病院のホルモン補充のタイミング(時間)や、やり方がかなり違うため3回目の移植のBT7のhCGの数値が低かったのではないかと疑問に思っています。こちらは特に問題ないのでしょうか。
 B病院:移植5日前(約120時間)からウトロゲスタン膣錠開始
 C病院:移植7日前23時(約160時間)からデュファストン服用開始、移植4日前23時(約88時間)からルティナス膣錠開始
最後の移植もC病院で行うため、ホルモン補充周期は上記方法になるので少し不安です。C病院は透明体を全てハッチングするため着床する時間を考慮してなのでしょうか。また以前の記事でホルモン補充開始は113時間前後とありましたが、デュファストンは服用していますが膣錠開始からで計算すると25時間も足りません。その場合ホルモン膣錠を早めにスタートするか(自己判断)やった事のない自然周期にチャレンジしてみたほうがいいのか、松林先生はどちらのほうが可能性があると思われますか。またウトロゲスタン、ルティナスなど膣錠での違いもあるのでしょうか。ちなみに着床の窓検査は受けたことはありません。先日凍結できた胚盤胞は5日目4CCと6日目4BB(サイズが154μmなので3BBかもしれないです)になりますが、この2つを戻し体外受精は一旦終了しようと思っています(C病院では2個移植ができないため1個ずつ移植予定です)。
③保険での治療が終わった後、FTを受けその後人工授精に切り替えようと思っています。42歳高齢でのFTはあまり有効的ではないでしょうか。FT後、もしまた体外受精にチャレンジした際、初期胚での移植も可能になるのでしょうか(なかなか胚盤胞にならないため)。

 

A 

①②B病院の方法でのホルモン補充周期移植が必勝法になると思います。化学流産の場合には、必勝法とは言えません。C病院の方法は(世界的に見ても)極めて特殊な方法ですが、数多くの症例から導き出されたやり方だと思います。私なら、ERPeak検査を行なってから、移植のプランを考えたいと思います。
③FTが有効かどうかは別として、42歳での人工授精での妊娠率は2-5%、タイミングでは1-2%です。また、なかなか胚盤胞にならない方は、初期胚移植がお勧めです。誤解されている方がおられるのですが、卵管閉塞があっても初期胚移植で妊娠できますので、現段階でも初期胚移植へ切り替えができます。卵管がない方は胚盤胞でないと妊娠できないという卵管回帰説には、きちんとした根拠がありません。そもそも体外受精が開始した当初の適応は卵管因子(両側卵管閉塞や両側卵管切除後)のみでした。当初は胚盤胞へ育てる技術はありませんでしたので、全て初期胚移植でした。つまり、初期胚が卵管に戻ることなく妊娠していた訳です。つまり、卵管の摘出、閉塞、狭窄の場合に、初期胚(分割胚)で十分妊娠できることになります。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。