Q&A3789 第2子の胚選択 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 以前、2022.12.19「嬉しい報告とQ&A3515 ブログで得た知識で出産、第2子希望で相談」、2023.2.8「Q&A3566 異常受精ばかりです」、2023.4.5「Q&A3622 採卵前に排卵してしまいました」、2023.6.6「Q&A3684 第2子の胚選択は?」でご相談させていただきました。お忙しい中、毎回ご丁寧にご回答くださり大変感謝しております。

今周期はホルモン補充周期にて13G3→4AA(IVF)になった胚盤胞をSEET法で移植しましたが、陰性に終わりました。良好胚を移植したのになぜだろうと悔しい気持ちが溢れて涙も止まらずですが前を向きたいです。松林先生のご提案の通り、移植前にホルモン補充周期でERPeakとついでにERBiome検査も実施し、ERPeakは受容期前、ERBiomeは良い菌も悪い菌も(―)という結果となり、ラクトフェリンとプロバイオティクスを処方していただきました。着床の窓は産後にズレており検査してよかったです。今回の判定日に、銅亜鉛及びビタミンDのみ再検査しました。


現状残っている胚は以下の通りです。
11G3(初期胚凍結)ICSI
11G3→4AA(胚盤胞)ICSI
8G2→4AB(胚盤胞)ICSI
8G2→4BB (胚盤胞)ICSI
8G3→4AB(胚盤胞)IVF

①判定日の診察の際、過去2回胚盤胞移植で陰性になっているので初期胚を移植してみるか、そろそろ2個移植や二段階移植も考慮しても良いのではないかとのアドバイスをいただきました。また、ホルモン補充周期か自然周期かでいうと、自然周期でもよいのではないかと薄々思っているとのことでした。診察後主人と話し合い、以下の方法で移植を考えているのですが、松林先生のご意見を頂けないでしょうか。胚選択やSEET法の是非についてのアドバイスもいただきたいです。なお、今後の貯卵は考えておりません。最後のチャンスと思っております。

9月に移植周期に入るつもりで生理4日目に受診したところ、1週間前の採血結果で銅の数値が200を超えていたことがわかり、今周期は移植キャンセルとなりました。キャンセルとなったのは残念でしたが、着床を妨げる原因が1つわかって少しホッとしました。次回採卵のつもりでDHEA服用も再開しようと思っています。銅の数値が原因だったとしたら、2個移植は避けても良いものでしょうか。双胎妊娠はできれば避けたいとは思っています。
 10月→低刺激採卵を実施+新鮮胚移植(第一子の際に妊娠した方法を最後に試したい)
 11月(夫出張で不在)→自然周期で胚盤胞1個移植

 12月→自然周期で胚盤胞2個移植
 1月→自然周期で初期胚と胚盤胞を二段階移植
②第一子を低刺激新鮮胚移植で授かっている経緯を考えると、ホルモン補充周期よりも自然排卵周期の方が何となく自分には合っているのかもしれないと思ってしまうのですが、いかがでしょうか。どちらを選ぶかの判断基準はあるのでしょうか。生理は規則的に来ているほうだと思います。
③着床関連の検査はやりつくした感があるのですが、念のため慢性子宮内膜炎の再発が怖かったので治癒した時の抗生剤をいただき、これから二週間服用予定です。ほかにできることはないでしょうか。ERPeak検査はホルモン補充周期で実施してしまったのですが、その結果を自然排卵周期移植にも当てはめて良いものか、自然排卵周期で再検査すべきでしょうか。
④今回着床しなかった原因って何かしらあると思うのですが、考えられる要因はありますか。担当医からは原因を考えるよりは前を向いて次何ができるかを考える方がよいとのことで、その通りとも思いつつ、考えられる要因で潰せるものがあればそうしたい気持ちもあり、悩ましいです。やはり卵の質になるのでしょうか。
⑤ERBiome検査で良い菌が全くいなかったということでラクトフェリンとプロバイオティクスをいただき移植までの約3週間服用しましたが、通常どのくらいの期間服用すれば基準値まで良い菌が増えるものなのでしょうか。再検査はしないとのことだったので気になりました。今回の陰性の原因の一つとも考えられるのかなとふと思いました。

⑥銅の数値を下げるために、亜鉛サプリを普段15mgのんでいたところを、リプロの亜鉛サプリを追加で4錠飲むようご指示いただき夕食前に服用していますが、気持ち悪くなってしまいます。朝2錠、夜2錠に分けても良いのでしょうか。一気に飲む方が効果があるなら頑張って飲みたいと思います。
⑦銅の数値の結果をいただいてから、なるべく銅が入っていないものを食べた方が良いと思ったものの、大半の食品には銅が含まれていることがわかり愕然としました。亜鉛をたくさん摂ることに注力すれば良いと思う一方で食生活で銅を沢山とってしまうのも怖いです。どのように食生活を考えていった方がよいでしょうか。銅を沢山含む食材を避ける方法しかないでしょうか。
⑧新鮮胚移植をする周期の場合、いつまでDHEAを服用すれば良いのでしょうか。

 

A 

①下記のプランで問題ないと思います。SEET法で上手くいっていませんので、SEETはやめておきます。あとはG-CSFやHCG子宮注入などのオプションをつけるかどうかですが、第一子の際にはおそらく実施していないと思いますので、最初はno optionでやってみたいところです。なお、銅高値が極めて重大な原因であるかについては何とも言えないところですので、2個移植や二段階移植も取り入れます。参考までに、私が選択した胚を記入しておきます。
 10月→低刺激採卵を実施+新鮮胚移植
 11月→自然周期で胚盤胞1個移植:4AA

 12月→自然周期で胚盤胞2個移植:4BB+4AB(IVF)
 1月→自然周期で初期胚と胚盤胞を二段階移植:11G3+4AB(ICSI)
②低刺激新鮮胚移植に近いのは、自然排卵周期です。うまくいった時の方法を踏襲するのが良いです。
③石橋を叩いて渡るタイプの方は、BCE(慢性子宮内膜炎)の再検査をするでしょうし、ERPeak検査を自然排卵周期でやり直すでしょう。しかし、基本的には、BCEは治った時の薬剤を服用し、ERPeak結果はホルモン補充周期で行ったものを自然排卵周期に当てはめることでカバーできます。
④4AAの妊娠率は約55%です。45%が妊娠判定陰性になりますので、受精卵の問題と考えます。決して悲観することはありません。
⑤3〜4週間服用すれば落ち着いているものと考えます。

⑥亜鉛サプリ服用により多くの方が気持ち悪くなります。この場合は分けて服用してください。
⑦食事で銅亜鉛を調節しようとすると、栄養のバランスが乱れますので、亜鉛サプリ服用以外に良い方法はありません。
⑧トリガー当日までDHEAを服用すれば十分ですが、判定日まで服用していただいても構いません(タイミングや人工授精の方は、妊娠判定までの服用としています)。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。