最近読んでよかった本 174 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった本を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

私のブログでは月2回本の紹介をしています。

何故本を紹介しているかについては、2016.9.29「「最近読んでよかった本」の新たな効能?「ニュートラルな気持ち」へ!」をご覧ください。

 

 

「鍵師ギドウ」大門剛明

仕事も住む場所もないニート青年の「孔太」は、人生を悲観してマンションの屋上から飛び降り自殺を図った。しかし、偶然通りかかった「心晴」に助けられ、東京の下町、谷中銀座商店街のはずれにある鍵屋「野々村十六堂」に住み込みで働くことになる。小晴は介護士として働くかたわら、十六堂の手伝いもしていたのだ。十六堂の主は鍵師「野々村多聞」。孔太はそれまでピッキングで窃盗を繰り返すコソ泥のようなことをしていたが、心晴の指導を受け、多聞の仕事を見ることで、鍵師としての力を身につけていく。「最強の錠前」といわれる「ガヴィニエスの錠前」を開錠した窃盗犯「鍵師ギドウ」の行方を追う。最後に明らかになる真実に愕然とします。

 

 

「紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人」歌田年

どんな紙でも見分けられる男「渡部」が営む紙鑑定事務所は閑古鳥の毎日。そんなある日「紙鑑定」を「神探偵」と勘違いした女性が、彼氏の浮気調査をしてほしいと訪ねてくる。手がかりはプラモデルの写真一枚だけ。ダメ元で調査を始めた渡部は、伝説のプラモデル造形家「土生井(はぶい)」と出会う。土生井の推理力と渡部の行動力を活かして真相を突き止める。その噂を聞きつけた2人目の依頼者は、行方不明の妹を捜して欲しいと、妹の部屋に残されたジオラマを持って訪ねてくる。土生井の推理力がまたもや力を発揮するが、犯人の方が一枚上手!?大量殺人の計画を知り、何としても食い止めようと必死に犯人を追いかける。一気読み必至です。

 

 

「クラインの壺」岡嶋二人

本作品は、1989年に書かれた作品とは思えない、ゲームにバーチャルリアリティ(VR)を取り入れたというもの。ゲームブックのシナリオ大賞に「上杉彰彦」が応募した作品「ブレインシンドローム」が、最新鋭ゲームの原作として採用された。上杉は「高石梨紗」と共にゲームのテストプレイヤーとして採用される。ゲームでは、様々なバグが発生し、その都度修正をかける日々。ゲームの進行と現実の世界が交錯しクライマックスを迎える。クラインの壺とは、境界も表裏の区別も持たない局面の一種で、主に位相幾何学で扱われる。メビウスの輪の立体版のようなイメージです

 

 

「ホテル・ピーベリー」近藤史恵

「木崎淳平」は教師をやめ、ハワイ島を訪れる。友人から奨められた日本人経営のホテルは「リピーターお断り」が特徴。全6室のアットホームな宿に3ヶ月の予定で滞在することになる。自然を満喫し始めた矢先、宿泊客のひとりがプールで溺死しているところを発見される。さらに別の宿泊客もバイクで事故死してしまう。「このホテルの客はみんな嘘をついている」、果たしてそれぞれの嘘とは何なのか?不穏な空気に充ちたミステリです。

 

 

「悪い夏」染井為人

千葉県北西部に位置する地方都市の市役所生活福祉課の若手職員である「佐々木守」。正義感が強過ぎるためチーム内で煙たがられている「宮田有子」。うだるような暑さのなか、稼業や生活が立ちゆかなくなったおもに底辺の人間たちが入り交じり、雪だるま式に悪い状況へと転がり落ちていくブラック群像劇。第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作、かつ染井為人のデビュー作である本書は、読後感があまりよろしくないイヤミス。どんどん地獄にハマり、全員が最終的には狂っていくお話。どうしてこんなことになったのか、どこで間違えてしまったのか、これからどうすればいいのか、登場人物たちの懊悩と焦りと絶望が濃度を増してくる。生活保護制度の機能不全や不正受給、母子家庭を追い詰める貧困、育児放棄といった深刻な問題を小説の形で訴える作品です。