最近読んでよかった本 169 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった本を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

私のブログでは月2回本の紹介をしています。

何故本を紹介しているかについては、2016.9.29「「最近読んでよかった本」の新たな効能?「ニュートラルな気持ち」へ!」をご覧ください。

 

 

「探偵はひとりぼっち」東直己

ススキノ探偵シリーズ第4作。みんなから愛されていたおかまのマサコが、テレビのマジックコンテストに出演し準優勝する。札幌に帰って祝勝会の後、マサコはリンチに遭って亡くなる。<俺>は友人としてマサコの無念を晴らそうと調査を開始するも、背後にある大きな力を恐れ、関係者一同が口をつぐみ、手を引けと一様に言う。孤立無援の中でも助けてくれるヒトが少しずつ現れ、ついに真相に辿り着く。意外な人物と意外な結末に驚きます。

 

 

「ツナグ」辻村深月

生きているうちに会いたい亡くなった方は誰ですか?死んでから会いたい生きている方は誰ですか?一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという使者(ツナグ)の「渋谷歩美(あゆみ)」は高校生。突然死したアイドルが心の支えだったOL「平瀬愛美」、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子「畠田靖彦」、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生「嵐美砂」、失踪した婚約者を待ち続ける会社員「土谷功一」の4人の依頼をこなしていく4つの物語。ツナグの仲介のもと再会した生者と死者には、それぞれのドラマがある。最終章ではツナグ視点で書かれ、最初の4話の裏話が進んでいく。ツナグは何のためになるのか、死者を生者のために利用しているだけではないか。死後の世界を題材にするのはとても難しいのですが、この手法は圧巻です。第32回 吉川英治文学新人賞。映画化されました。

 

 

「名探偵、初心者ですが 舞田ひとみの推理ノート」歌野晶午

ワーカホリック気味の独身刑事「舞田歳三(いくみ)」は、高利貸しの女が被害者となった放火殺人を捜査することになる。債務者や商売敵など容疑者は浮上するものの、決定的な証拠が見つからない。だが、歳三は11歳の姪「ひとみ」の言葉をきっかけに、事件の盲点に気付く。そして明らかになったのは、全てをひっくり返す驚きの真相だった。叔父と姪の微笑ましい日常に張り巡らされた巧妙な伏線。どんでん返し満載の6編を収録した連作ミステリです。

 

 

「夜行」森見登美彦

本書は森見登美彦さんの作家十周年を記念して執筆された作品。十年前に京都の英会話スクールに年齢の違う6人の男女が通っていた。彼らは鞍馬の火祭を見物しようと夜に出掛けるが、一人の女性「長谷川」さんが突然姿を消す。彼女を見つける手がかりは何一つなく、生きているとも死んでいるとも分からないまま、残された5人は連絡を取らなくなる。今回「大橋」君の呼びかけで5人は再び集まり、鞍馬の火祭を見物することになった。しかし、火祭に行くでもなく宿にとどまる5人は、それぞれ旅の思い出を順番に語り始める。どれも怪談のような内容で、全員が旅先で画家「岸田道生」が描いた銅版画「夜行」を目にしていた。夜行は48作からなる連作で、タイトルにそれぞれ地名が書かれ、顔のない一人の女性が描かれている。大橋君は、長谷川さんも同じような体験をして、戻って来れなかったのではと考える。大橋君自身も最後に「夜行」と関係する不思議な体験をする。京都と不思議をモチーフにした森見登美彦さんらしい作品です。

 

 

「レモンと殺人鬼」くわがきあゆ

第21回このミステリーがすごい!大賞・文庫グランプリ受賞作。十年前、洋食屋を営んでいた父親が通り魔に殺され、それがきっかけで母親は失踪してしまう。姉妹はそれぞれ別の親戚に引き取られ、不遇をかこつ日々を送る。しかし、妹の「妃奈」が遺体で発見されたことから、運命の輪は再び回りだす。妃奈には保険金殺人の噂が流れネットで拡散してしまう。妹の潔白を信じる姉の「美桜」は、その疑いを晴らすべく行動を開始する。登場人物の人間性が全て異常で、全員が怪しい。最後、二転三転がずっと続いて、最も予想外の犯人に辿り着きます。