Q&A3637 正常胚2回移殖で結果が出ません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 39歳、不妊治療2年妊娠歴なし

採卵3回移殖4回後リプロ大阪に転院しました。
不育症検査の後にPGTA正常胚を2回移殖しましたが妊娠に至りませんでした。

BCE検査 陰性
子宮鏡検査 異常なし
子宮収縮 あり→ダクチル
不育検査 aCL-IgG 22.2→バイアスピリン+ヘパリン
ERPeak 窓ズレあり 受容期前
潜在性甲状腺機能低下症あり→チラーヂン62.5μg内服(内科管理中)
サプリ ビタミンD、DHEA、ラクトフェリン

移殖1 正常胚6日目4BB ホルモン補充周期、ダクチル・バイアスピリン内服、ヘパリン注射、SEET法、移植日+1→結果HCG<0.3
移殖2 正常胚5日目3AA 自然排卵周期、ダクチル・バイアスピリン内服、ヘパリン注射、ピシバニール、プレドニン判定日まで延長、G-CSF、移植日+1結果→HCG 19.5→化学流産

PGTAによる胚へのダメージが考えられるという判断で今回の採卵はPGTAせずに凍結し以下の結果となりました。
5日目(3日目の状態・DC/RC)
4AA(8G2)
3AA(7G3・DC2)
4BC(8G3・DC1)
4BC(12G3・DC1)
3CC(8G3・DC2)
6日目
4BB(8G3・DC1・RC)

①正常胚率は33%(3/9)でした。前院で2個移植は一度経験しましたが、陰性でした。複数移植とするとどの順番、どの組み合わせで戻すといいでしょうか。胚盤胞になれば、基本的には胚盤胞の評価で胚を選択しますか。DCやRC、3日目のグレードや分割数も考慮しながら選択するのでしょうか。
②移殖2でピシバニールを使用しましたが、着床反応があったということは効果があると言えますでしょうか。化学流産であればあまり功を奏したというものではないのでしょうか。
③次回移植の際に必要な着床不全の対策はありますでしょうか。なにか試してみたほうがよい方法は他にありますでしょうか。

 

A 

①胚盤胞のグレード評価は妊娠率の目安にはなりますが、正常胚は胚のグレードとリンクしません。正常胚率が33%でしたら、PGT未実施胚3個移植をお勧めします。着床の窓が狭い可能性を考慮すると、ステージの異なる胚を選択したいので、私なら、次の組み合わせで移植します。

1 4AA(8G2)+4BC(12G3・DC1)+3CC(8G3・DC2)

2 3AA(7G3・DC2)+4BC(8G3・DC1)+4BB(8G3・DC1・RC)

DCやRCがある胚からも正常胚ができますので、DCやRCは考慮しません。3日目のグレードや分割数はステージの異なる胚選択のために少し参考にする程度です。
②HCG 19.5は効果ありと判断します。移植1と移殖2の違いは、自然排卵周期、ピシバニール、プレドニン判定日まで延長、G-CSFです。次回も移殖2と同様のプランを推奨します。
③原因不明着床障害の対策として、リプロダクションクリニックで現在可能なその他の対策は、PRP子宮注入とHCG子宮注入です。試してみても良いかもしれません(どの方に有効かを調べる方法はありません)。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。