口腔疾患の性差に詳しい大阪大学大学院歯学研究科、予防歯科学教室、教授「天野敦雄」さんのお話をご紹介します。
医師協Mate 2023; 335: 12(日本)
要約:歯科領域においても、歯周病に性差による違いがあります。その原因は女性ホルモン(エストロゲン)です。このため、女性の一生では、それぞれの年代で特有の歯周病がみられます。
1 思春期性・月経関連歯周病:エストロゲンが歯茎に炎症を誘発、エストロゲンを好む歯周病菌の増加、プロゲステロンが歯茎に浮腫を誘発→歯茎の腫れ、歯磨き時の出血、口臭、口腔内のねばつき
2 侵襲性(若年性)歯周病:女性ホルモンのバランスの乱れ、家族性の遺伝、日本人ではまれ(0.05〜0.1%)→歯茎と骨が急速に壊れていく重度歯周炎、思春期〜35歳に発症
3 妊娠性歯周病:女性ホルモンの急増、口腔ケアがおろそかになる、頻度高い(50%)→歯茎の腫れ、歯磨き時の出血、口臭、口腔内のねばつき、早産リスク2.27倍、低体重児リスク4.03倍
4 閉経後歯周病:女性ホルモンの枯渇、ドライマウス(唾液量減少)→元々の歯周病の悪化、稀に慢性剥離性歯肉炎
このような歯周病の予防には口腔ケアが欠かせません。セルフケアだけでなく、年に2〜3回は歯科衛生士によるプロの口腔ケアをお勧めします。
解説:歯科領域にも性差医療が関与しています。女性の一生にわたる問題ですので、ぜひ口腔ケアを見直してみてはいかがでしょう。
下記の記事を参照してください。
2023.2.1「歯ブラシと歯磨き粉」