嬉しい報告とQ&A3382 第二子希望で残りの胚移植について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 第一子を貴院で授かり2020年10月、40歳で元気な男の子を出産しました。
41歳になり第二子治療をスタートしておりますが、先生のご意見が伺いたく質問している次第です。

第一子治療時、採卵を繰り返すも全く胚盤胞にならず移植にたどり着けなかったため、貴院に転院。
転院後凍結できたのは下記です。

38歳採卵(全て体外受精由来):9G2、9G3、4AB、4AB
39歳採卵(顕微由来):4AA、6日目3BC

移植1 4AA(第一子治療時移植hCG 0.8で陰性)

移植2 4AB(ホルモン補充、G-CSF、ダクチル、着床の窓+1日で妊娠、出産)

移植3 4AB(今回移植hCG検出せずで陰性)
貴院で初めて良好胚盤胞が凍結できましたが、それでも採卵にはかなり苦戦し、凍結ゼロも続きました。36〜39歳の間に採れた卵の総数が90個のうち、胚盤胞凍結に至ったのはたったの4個でした。体外受精にステップアップする以前のタイミングや人工授精でも一度もかすったことがなく、受精し3日目までは順調なものの胚盤胞まで育ちにくいことと、子宮内膜炎の治療、ダクチル使用を考えると着床障害であったと考えられます。

今残る凍結胚は、初期胚2個と、6日目3BCのみとなりました。自費で良いので必勝法に従って移植したいと思います。今貴院より勧められているのは、初期胚2個移植です。高齢での双子妊娠の早産や合併症のリスクと、長男を抱えての双子育児の壮絶さを考えると、双子妊娠は避けたいと思っております。

①私の場合、初期胚2個移植での双子の確率はかなり低いと考えて良いのでしょうか。双子は避けたいので1個移植にしたい気持ちと、胚同士が助け合ってどちらか1個が着床してくれることを期待して2個移植にしたい気持ちと、なかなか決められません。1個ずつでは、2個移植よりもかなり着床の可能性が下がるのでしょうか。この条件下で、先生ならば1個と2個どちらを勧めますか。
②6日目3BCの使い道。初期胚2個を使い果たしたのち、単体で移植する価値はありますか。それとも、単体で戻さずに採卵をしたほうが良いのでしょうか(採卵は全く考えていなかったのですが、凍結胚の残りが少なくなったことで少し視野に入れるようになりました。AMH測定を依頼して結果待ちなので、その数値次第で考えようかなという気持ちもあります)。

移植について迷っているうちに、窓のずれも心配になってきました。貴院から勧められはしませんでしたが、残り少ない大事な凍結胚ですので不安要素は潰しておこうと思い、今週期はERpeakを受けることにしました。

 

A 出産後(あるいは流産後)に陰性判定が続く方では、慢性子宮内膜炎が見られたり、着床の窓が変化していることがあります。出産後1回の陰性であり、陰性判定が続いている訳ではありませんが、慢性子宮内膜炎検査(BCE)と着床の窓の検査(ERPeak)はやっておいた方が良いでしょう。

①初期胚2個で胚盤胞1個分の妊娠率になります。38歳採卵時の染色体異常率は47.9%ですので、2つとも着床して双子(2卵性)になることはほとんどないと思います。しかし、1卵性の双子の可能性はいかなる場合でも起こり得ます。私も初期胚2個移植をお勧めします。
②6日目3BCを単体で移植する価値はあります。最後に残った胚は良くない胚とされているものですが、最後の移植で出産される方は(意外なことに)少なくありません。仮に3CC胚だったとしても出産されている方がおられるのも事実です。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。