告知:リプロダクションクリニックにおける不妊治療の保険適用について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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リプロダクションクリニックにおける不妊治療の保険適用について

2022年3月1日付けで下記の声明文を発表しましたので、原文のまま掲載します。

 

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生殖補助医療(体外受精、顕微授精)の保険適用に際して

 

リプロダクションクリニックは、男性と女性を同時に診療するという日本初のコンセプトの基に、私たちは世界最先端の生殖医療を提供すべく、日々新たなチャレンジを行ってまいりました。

 

さて、2022年4月から生殖補助医療の保険適用が始まりますが、日本の健康保険制度の枠組みでは、保険と自費の診療を混在させる「混合診療」は禁止されています。私たちは、保険適用の範囲内で必要最小限の診療を行うのか、あるいはこれまで行ってきた世界最先端の生殖医療を自費で行うのか、選択を迫られることになりました。もちろん両者を併用できれば良いのですが、同一クリニックの中で、両者(ダブルスタンダード)を走らせることは、不可能であると判断せざるを得ませんでした。保険適用の患者様と自費診療の患者様に医療レベルの差をつけるやり方は、我々のこれまでの治療方針にはなじみません。どちらを選択するか、ここ半年間に渡り日々議論を重ねてきました。

 

その結果、苦渋の決断ですが、現時点ではこれまで行ってきた世界最先端の生殖医療を自費で行うことに致しました。つまり、リプロダクションクリニックは大阪・東京ともに保険診療の生殖補助医療(体外受精、顕微授精)を行わないという決断です。世界最先端の生殖医療を捨て去ることは、私たちの築いてきた存在意義を失うことに他なりません。最先端の生殖医療を実施するためには、スピードが最重要です。新しい技術が発表されればすぐに実施し、それがこれまで妊娠において困難を極めてきた患者様の幸せに繋がることを、開院以来実感しているからです。

 

私たちは今回の保険適用化を否定するものではなく、多くの患者様のアクセスが良くなることは好ましいことと考えます。しかしながら、我々の提供する医療レベルのクオリティが保てなくなることを危惧した上での、苦渋の決断であることについて、皆様のご理解をいただければ幸いです。なお、関係当局と相談の上、一般不妊診療、男性不妊診療の一部においては、保険適用を行う予定であります。また、2022年3月31日までに採卵周期に入り、凍結胚を当院で保管中の患者様におかれましては、混合診療にならない場合において、保険診療による胚移植も考慮しております。

 

保険診療でなかなか妊娠が達成できない患者様、先進的な高度生殖医療を必要とする方々の受け皿となるべく、今後も精進してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。