Q&A3124 胚移植の順番について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 成長が進んでいない胚よりも成長が進んだ胚の方が移植1回あたりの妊娠率や生産率が高いため、ランクの高い胚盤胞→ランクの低い胚盤胞→初期胚の順番で移殖した方が早く妊娠するのではないだろうかと思っていました。
2016.11.3の記事でも、「妊娠までにかかる時間は胚盤胞移植で短くなる」という結果になっています。また、その方が身体や精神面、金銭的な負担も少ないでしょうし、流産率も低いのではないだろうかとも思います。実際、アスクドクターズでは、成長が進んだ胚から進んでいない胚の順番に移植を勧める先生方もいらっしゃいます。

ですが、松林先生のブログのQ&Aをいろいろと拝見すると、必ずしもその順番での移植を勧めておられないようです。例えば、2021.10.20「
Q&A3088 第2子治療に向けて胚選択は?」のケースです。この方の場合、先生は、
②5日目BL2(体外受精)→①3日目9G3(体外受精)→③6日目4CB(顕微授精)→④6日目3CB(顕微授精)という順の移植を提案されています。このご意見に対して素人の私は、胚1個あたりの妊娠率や生産率を考えると、下の順の方が、心身や金銭的な負担が少ないうちに早く出産できるのではと考えてしまいます。③6日目4CB(顕微授精)→④6日目3CB(顕微授精)→②5日目BL2(体外受精)→①3日目9G3(体外受精)

先生が、成長が進んだ状態で凍結された胚盤胞よりも先に、ランクの低い胚盤胞や初期胚の移植を勧める理由は何でしょうか。先生お勧めの順番の方が、早く出産に結びつくとお考えになる理由をご教授ください。想像するに、6日目胚盤胞の妊娠率や生産率が低いからでしょうか。またそうであるとしても、仮に過去に6日目の胚盤胞で妊娠出産したことがある場合、お勧めの移植順は変わるのでしょうか。

 

A それぞれクリニックでは、胚盤胞の凍結日とグレード別に妊娠率の統計を取っていると思います。私はリプロの統計を元に、移植胚の順番を提案していますが、本来なら、そのクリニックの統計を元にして、胚の写真を見直して、順番を決めるのが良いです。また、胚盤胞になった胚の初期胚の段階のグレードも参考にします。なお、5日目胚盤胞グレード2は、移植の前日に融解すると移植当日には5ABや4BAに化ける可能性のある胚盤胞です。

 

何故、胚移植の順番を決めてもらいたくて、私のブログに質問されるのか、あるいは私の外来を希望されるのか、それは、素人の考えた順番とプロの考えた順番が異なるからです。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。