Q&A3091 45歳3ヶ月、AMH0.48、乏精子症 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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Q 治療3年目、45歳3ヶ月、AMH0.48、夫は事故により睾丸が1個しかなく乏精子症


採卵数は低刺激でも高刺激でも、1~3個。胚盤胞を目指せる数が採れないことと、年齢のことも考えて、ずっと初期胚移植を続けています。一度だけ、未熟卵から体外培養した1個を胚盤胞目指しましたが、その時は分割せず、それからはずっと初期胚です。3日目初期胚のグレードはいつもよく、いつも8G1か8G2です。夫の数値が、ふりかけにはギリギリ出来るがギリギリ過ぎて体外受精はお勧め出来ないと言われ、顕微授精しかしたことがありません。採卵時42才の初期胚(8G1)自然周期移植で、過去に一度妊娠判定でましたが、その後、初期の稽留流産となり、その後は初期胚を6回移植して陰性と化学流産しかありません。

①判定日に、陰性ながらも低いhCG数値が出ることがあります。移植周期の判定日にhCGが4.0以上あれば、初期胚が体内でちゃんと胚盤胞になり、孵化して、着床のアクションをするところまでは成功したと考えていいのでしょうか(判定日はET10。自然周期移植で、排卵のトリガーのhCG10000投与から2週間以上あいています。現クリニックでの陽性基準は、5.0以上です)。
②医師には精子数が少ないとシャーレ内のPHが変わるので、ふりかけはおすすめしないと言われますが、培養士さんと卵の確認相談した際、その場で計算をしてくれて、ギリギリだけどふりかけもできると言われました。年齢があがるほど、受精や分割も難航しており、ギリギリでも顕微よりふりかけに挑戦する方が、良い胚になるのか、迷っています。調整後の精液成績は、スパムセパレーター(ZyMot)での調整で、液量0.5ml、精子濃度0.8百万/ml、総運動数100%、運動精子濃度0.8百万/ml、総運動精子数0.4百万。スパムセパレーターだとブレがなく、毎回この数値です。調整前は、液量3.4ml、精子濃度19.4百万/ml、総運動数19.2%、運動精子濃度3.7百万/ml、総運動精子数12.6百万、前進運動率10.7%、正常形態率1.7%。調整前の数値は毎回少しずつ違いますが、おおむねこの感じです。先生は、ふりかけ可能だと思いますか。

③この精液成績でも、一度だけ治療期間のおやすみ周期にタイミング法での着床・陽性がありました(44才前半)。化学流産にはなりましたが、この精液数値でも、タイミング法の可能性はゼロではないということなのでしょうか。もうすぐお金が底をつくので、資金がつきた後に、ステップダウンしてタイミング法だけでもクリニックに通院するか迷っています。ちなみに、人工授精は過去に5回試して全て陰性でした。自己流タイミングで着床したのなら、不妊治療専門のクリニックに通院してのタイミング法の方が、まだしも可能性があがるでしょうか。

④培養士も医師も、初期胚のグレードがよいので胚盤胞にすることでより可能性が出るかもと考えているようです。初期胚で妊娠経験があるなら、このまま初期胚で挑戦してもいいのでしょうか。初期胚は1個移植も2個移植もトライしましたが、現在のクリニックでは3個以上は出来ません。それより、例え採卵数が少なく卵1個とかでも、胚盤胞を目指してみる方がいいのでしょうか。治療のやめ時も考えているのですが、どうしても諦めきれません

 

A 

①hCGを投与していなければ、少しでもhCGが出ていれば着床しています。トリガーのhCG10000投与から2週間以上だとすれば、およそhCG>3.0以上で着床しているものと考えます。

②当院では、調整後の運動精子濃度500万/mL以上を体外受精(ふりかけ法)の目安にしていますので、顕微授精が良いと思います。

治療期間のおやすみ周期にタイミング法での着床することがしばしばあります。これはニュートラルな気持ちになってたものと推察されます。ニュートラルな気持ちになるには、病院に通院していない方が良いですので、自己流タイミングをお勧めします。

④成功体験を踏襲するのが、妊娠への近道です。初期胚で妊娠経験があるなら、初期胚移植をお勧めします。年齢的には80%以上が異常胚ですので、計算上は5個までの移植が推奨されます。複数胚移植が可能なクリニックへの転院が良いでしょう。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。