Q&A3090 慢性子宮内膜炎について質問 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 36歳、妊娠治療歴2年


タイミング、人工授精は一度も陽性なしのため体外受精へステップアップ
採卵→凍結胚6個(4AAx3個、3BBx1個、4CCx1個、3BCx1個)
精子無力症の診断がありましたが、採卵時は顕微授精の必要はなく、体外受精にて受精できました。


採卵直後の細胞診にて慢性子宮内膜炎診断CD138(17/20)子宮鏡検査は異常なし
 →ビブラマイシン2週間服用→再陽性CD138(10/20)
 →フラジール+クラリスロマイシン2週間服用→再陽性CD138(18/20)
 →アベロックス2週間服用→再検査なしで一旦移植することに
ホルモン補充周期で4AA移植→化学流産


TgAb抗体が基準値の10倍ほどだったが、当初は機能数値に問題なし→移植時に測定しTSH 3.7に上がっていたためレボチロキシン服用開始
化学流産後、ALICE検査実施

①3クールの抗生剤治療でも慢性子宮内膜炎の完治が確認できなかったのですが、Alice検査で原因菌が特できない場合、先生なら今後の治療はどう考えますか(掻把するなど考えた方が良いのでしょうか)。
②一番最初のビブラマイシンで一旦数値は下がってはいるのですが、その後抗生剤を変更してCD138が増加しました。同じ抗生剤を2週間以上使用するのは耐性菌を考慮するとあまり良くないのでしょうか。
③難治性慢性子宮内膜炎の場合、菌などの原因ではなく、自己抗体が要因となっている場合があるとのことですが、それは検査で分かるものでしょうか。原因が自己抗体の場合は治療はできないのでしょうか。また、甲状腺のTgAb抗体高値と慢性子宮内膜炎は全く無関係と思っていて良いでしょうか。

A まず、難治性の慢性子宮内膜炎の場合に、診断が正しくないことがあります。慢性子宮内膜炎の標本作成は検査会社に任せるのは構いませんが、診断を検査会社に任せると、様々な病理診断医が見ることになり、評価が一定ではありません(病理診断医は全ての臓器を見ますので、婦人科臓器の専門ではありません)。診断は、それぞれのクリニックでエキスパートの1名が実施した方が良いです(標本の見比べもできます)。リプロでは、慢性子宮内膜炎が治らなかった方は一人もおりません。

 

ALICE検査は慢性子宮内膜炎になるかもしれない菌を検出するものであり、必ずしも全ての菌を網羅できていませんし、菌が検出できない内膜炎もあり得ます。
②フラジール+クラリスロマイシンは間違いなく無効です。ビブラマイシンはある程度有効です。アベロックスは評価不能です(慢性子宮内膜炎存在下で移植すると、陰性か少ししか妊娠反応が出ません)。私なら、ビブラマイシンをもう一度使ってみたいと思います(CD138再検査が必要)。
③自己免疫については良く分かっていませんので、何とも申し上げられません。なお、TgAb抗体高値と慢性子宮内膜炎は無関係です。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。