最近読んでよかった本 その117 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった4冊を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

私のブログでは月2回本の紹介をしています。

何故本を紹介しているかについては、2016.9.29「「最近読んでよかった本」の新たな効能?「ニュートラルな気持ち」へ!」をご覧ください。

 

 

「痣」伊岡瞬

2020年の徳間文庫大賞受賞作。奥多摩分署管内で、全裸美女冷凍殺人事件が発生した。被害者の左胸には柳の葉のような印。二週間後に刑事を辞職する真壁修は激しく動揺する。その印は亡き妻にあった痣と酷似していたのだ。真壁を引き止めるかのように、次々と起きるに多様な手口の残虐な事件。そこにも例の痣があった。妻を殺した犯人は死んだはずなのに、なぜ俺を挑発するのか。過去と現在が交差し、戦慄の真相が明らかになる。伏線の展開と回収がしっかりされています。読後感はモヤモヤしますが、とても面白いです。

 

 

「AX(アックス)」伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ第3作。表向きは文房具会社の会社員、裏の世界では殺し屋の「兜(かぶと)」は、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほど。兜は、フェアであることを信条とし、心優しいお父さんでもある。兜がこの仕事を辞めたいと考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。仲介業者から言われ、引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日思わぬ襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることを家族は知らないので、一人で何とかするしかないのだが、、、八方塞がりの現状をどう切り抜けるのか!?全ての伏線は綺麗に回収され、最後の大どんでん返しに間違いなく驚きます。伊坂さんは時間軸の違う複数の視点を操るのがメチャメチャ上手な作家で、私の好みの文体です。本作品はABCEFと並んでいます。Dが抜けたのは、挫折したためのようで、その間なんと3年。新海誠の「君の名は。」をヒントにDを抹消し、新たにEFを書き本書が誕生しました。

伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ第1作「グラスホッパー」は2021.1.6「最近読んでよかった本 その108」で、第2作「マリアビートル」は、2021.5.6「」で、新海誠「君の名は。」は、2016.11.7「最近読んでよかった本 その19」で紹介しています。

 

 

「再会」横関大

第56回(2010年)江戸川乱歩賞受賞作の本書は「横関大」のデビュー作。受賞時のタイトルは「再会のタイムカプセル」、2002年から8年連続で応募しやっと受賞に至ったようですが、審査員の文句なしで満場一致の上の受賞です。名門私立中学に特待生として入学が決まっている「岩本万季子」の息子の万引きから始まったスーパー店主「佐久間秀之」殺害事件。使われた拳銃は23年前紛失したままになっている殉職警官の拳銃と特定された。23年前の事件にも関わっていた万季子(当時小学6年生)と3人の同級生「清原圭介」「佐久間直人」「飛奈淳一」は、小学校の卒業式前日に、その拳銃を隠したタイムカプセルを小学校の校庭に埋めたのだ。タイムカプセルに隠した拳銃を持ち出し、使ったのは4人のうち誰なのか?23年前の事件と現在の事件を違和感なく巧みに解き明かす本書、とても素晴らしい作品です。2012年にテレビドラマ化されました。

 

 

「離婚男子」中場利一
大型タンクローリー運転手の夫「健二」が帰宅すると、妻の「香織」が家財道具一式と一緒に消えていた。二歳半の一人娘「詩織」は、健二の両親の家にいたのだが、、、詩織は何も語らない。健二は大型トラックの助手席に詩織を乗せて、ママ探しに東奔西走する。香織は何故娘を置いて家を出て行ったのか?健二は慣れない子育てに奮闘しながら、娘と向き合っていく。そして妻とも向き合い始める。夫婦や親子の愛とは何かについて、とても考えさせる作品です。この話題は深刻になってしまうのですが、健二のキャラと関西弁で円滑な描写になっています。二歳半にしてはあまりに大人な発言をする詩織ちゃんに脱帽です。