Q&A2784 第12因子欠乏症、4回流産 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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Q 2020.5.22「Q&A2572 流産3回(移植7回)、卵管水腫があります」で質問をさせていただいた者です。

現在体外・顕微授精で8回移植し4回妊娠しましたが、今回4度目の流産となりました。今回の妊娠はリプロにてオプション検査を実施し対策を立てた上での移植でしたので大変落ち込んでおります。

以下、時系列で私の妊娠と流産経過についてです。
◎1度目の妊娠は卵管水腫なし、5日目4ABの胚盤胞→BT12 HCG 1109mIU/ml、7週で胎芽2つ確認できるも、心拍確認できず。稽留流産。絨毛染色体検査の結果、正常染色体。
◎2度目の妊娠は卵管水腫あり。移植日穿刺吸引。3日目分割胚グレード8分割A評価2つ→ET14 HCG 2909mIU/ml、胎嚢確認する直前5w0dで大量出血。血塊が出て(おそらく胎嚢)その後胎嚢確認できず進行流産。
◎3度目の妊娠は卵管水腫なし。3日目分割胚グレード8分割A評価、9分割A評価の2つ→ET15 HCG 917mIU/ml、 ET14から出血。のち化学流産

リプロでオプション検査を実施。第12因子欠乏症があり、バイアスピリンとヘパリン自己注射の対策へ。
◎4度目の妊娠は卵管水腫なし。通院先のクリニックでホルモン補充療法が生理開始2日目からなのでバイアスピリンも同じ日に服用とリプロ大阪で指示あり。ヘパリン自己注射は移植日から〜。5日目胚盤胞4AAと6日目胚盤胞4AB2つ
→BT13 HCG2621mIU/ml、BT4から茶色のおりものが出たり止まったり。
4週6日(BT15)に生理1日目ほどの鮮血。3時間ほどで止まる。
5週1日(BT17)胎嚢と卵黄嚢確認。
しかし同日鮮血が増えてきて胎嚢と卵黄嚢確認後3時間後には血塊が出て進行流産

上記のようにリプロにて対策はしましたが4回目の流産となりました。2度目と4度目の妊娠〜流産経過が大変酷似しております。こちらの原因はやはり第12因子欠乏の影響で血流が悪く大量出血となっているということでしょうか。2個移植をしたことで血流が追いつかず流産となる可能性もありますか。今後は1個移植の方が無難でしょうか。

さらに2つ質問があります。
第12因子欠乏症に関してはバイアスピリンとヘパリン自己注射が対策かと思います。しかし、低用量アスピリンのバイアスピリン100mgで大半は対策できても、もしかして私には量が多いということはありますか。バファリンA81の方が若干アスピリンの量が少ないので、次回はそちらの方がいいのでしょうか。もちろん試してみないことにはわからない部分もあるとは思いますが…。またバイアスピリン服用はホルモン補充開始と同じ日がやはりいいのでしょうか。生理5日目からの方がやはりいいのでしょうか。

 

A 1回目の妊娠と2,3,4回目の妊娠は経過が大きく異なります。後者は出血性の流産であることです。出血性の流産の場合には、バイアスピリン(バファリンA81)の使用が難しくなります。場合によってはヘパリンの使用も難しくなります。このような場合には、ステロイドホルモンや免疫グロブリンが奏功することがあります(ただしエビデンスなし)。

 

第12因子は血液凝固のブレーキの因子の一つですので、第12因子欠乏の影響で大量出血となるというストーリーは成り立たないと思います。逆に、アスピリンやヘパリンの投与により出血傾向が出現します。アスピリン+ヘパリン使用中に出血がある場合には、アスピリンを一時中止するのが有効であることが報告されています。また、第12因子は妊娠すると増加しますので、妊娠中の数値を確認する必要があります(第12因子>60%になれば、悪さはしません)。

 

また、出血性流産とは別に、卵管水腫がありますので卵管水腫の部分からの液体が子宮内に流入し、感染性流産の可能性もあります。これについては(前回も回答したように)卵管水腫の手術をお勧めします。

 

全体として、出血性流産+感染性流産が生じているものと推察します。卵管水腫の手術を行った上で移植を行い、(アスピリン+ヘパリンを用いずに)ステロイドホルモンや免疫グロブリンを使用するのが良いと思います(ただしエビデンスなし)。

 

下記の記事を参照してください。

2016.5.21「☆絨毛膜下血腫はアスピリンで増加する

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。