本論文は、PCOSの周産期予後について調査した国家規模の研究です(2020.8.25「PCOSは妊娠糖尿病と妊娠高血圧のリスク因子」の第2報です)。
Hum Reprod 2020; 35: 1914(カナダ)doi: 10.1093/humrep/deaa144
要約:2004〜2014年に出産した米国とカナダの入院統計(HCUP-NIS)を元に、PCOS14,882名と非PCOS9,081,906名の妊娠中の周産期予後について後方視的に検討しました。結果は下記の通り(全ての項目に有意差を認めました)。
PCOS 非PCOS
前期破水(<37w) 2.2% 1.1%
早産 12.2% 7.2%
常位胎盤早期剥離 1.6% 1.1%
帝王切開 52.7% 32.3%
先天奇形 1.4% 0.4%
母体感染 3.5% 2.2%
絨毛膜羊膜炎 3.0% 1.8%
各種交絡因子(年齢、人種、収入、加入保険種別、肥満、ART治療、既往帝王切開、高血圧症、糖尿病、甲状腺疾患、多胎妊娠、喫煙、麻薬など)を補正したところ、非PCOSと比べPCOSでは、前期破水(<37w)が1.48倍、早産が1.37倍、常位胎盤早期剥離が1.63倍、帝王切開が1.50倍、先天奇形が1.89倍、母体感染が1.58倍、絨毛膜羊膜炎が1.58倍に有意に増加していました(独立したリスク因子としての計算)。
解説:PCOSの方は周産期予後が不良であるとの論文が散見されますが、いずれも症例数が少ないものでした。本論文は、PCOSの周産期予後について調査した大規模な研究であり(約910万人)、出産に伴うリスクやお子さんのリスクの増加を示しています。ただし、後方視的検討であることと、疾病コードによる病名を元に分類したものであるため正しい病態を示しているか正確性に欠ける可能性があります。
下記の記事を参照してください。
2020.8.25「PCOSは妊娠糖尿病と妊娠高血圧のリスク因子」
2019.7.28「PCOSの方の妊娠合併症とお子さんの予後」