Q&A2733 胚盤胞率低下、良好胚盤胞になりません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 30歳、AMH 1.9、男性不妊のため顕微授精実施中

2016年 1回目 ショート法HMG150単位で、5個採卵、全て顕微授精。1個胚盤胞(2C)を新鮮胚移植で妊娠、出産。
2019年 2回目 アンタゴニスト法HMG225単位で、13個採卵、IVFとICSI 半分ずつ施行。IVFの1個が胚盤胞(4BC)になり、ホルモン補充の融解胚移植で妊娠、11週で流産。
2020年 3回目 アンタゴニスト法HMG300単位で、14個採卵、IVFとICSI 半分ずつ施行。1つも胚盤胞にならず。
4回目 ショート法HMG225単位で、15個採卵。IVFとICSI 半分ずつ施行。卵子活性化実施。初期胚を新鮮胚移植→陰性。初期胚2個、胚盤胞2個(3CC、4CC)凍結。
ホルモン補充周期で、2段階移植を2回実施。1回妊娠反応出て、胎嚢確認するも6週で流産。
5回目 黄体フィードバック法HMG300単位で、19個採卵。全てピエゾICSI施行。胚盤胞2個(4CB、6CB)で凍結。

①毎回採卵し受精し3日目までは分割も順調なのですが、その後分割がストップし、胚盤胞にほとんどならず、なっても非良好胚盤胞です。原因と対処方法はありますか。非良好胚盤胞でも妊娠出産しているので、希望は捨ててませんが、このように、どれだけ治療しても良好胚盤胞ができない人もいるのでしょうか。
②11週で流産した際には、ホルモン補充を終了し、出血が始まり、1週間後に流産となりました。順調に成長しており、流産の前日まで元気に動いていたのに、本当にショックでした。完全流産のため、染色体検査はしていません。
ホルモン補充をやめたことで流産した可能性はありますか。不育症の検査では、軽度の血液凝固異常があり、今後はアスピリンを飲み、胚移植をすることになりましたが、またホルモン補充をやめると流産するのではと不安です。

 

A 

3日目までは分割が順調なのにその後失速する場合には、精子側の要因が疑われます(3日目までは卵子の要因、それ以降は精子と卵子の要因であることが知られています)。IVF(ふりかけ法)では精子は選べませんので、このような場合には、ICSI(顕微授精)でより良い精子を選ぶ方法としてIMSI+PICSIをお勧めいたします。30代でしたら非良好胚盤胞でも妊娠出産は可能ですが、少しでも良好な胚を得たいものです。

ホルモン補充は、8〜10週まで必要であり、その後は不要になります。従って、ホルモン補充をやめたことで流産した可能性はまずありません。不育症検査は、日進月歩ですので(昨日の常識は今日の非常識であることが多々あります)、必ず不育症専門医の元で(最新のデータをもとにした)検査と治療をされることをお勧めいたします。

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。