☆卵胞の大きさと正常胚とは無関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、卵胞の大きさは卵子の成熟率と正の相関がありますが、正常胚率とは無関係であることを示しています。

 

Hum Reprod 2020; 35: 545(米国)doi: 10.1093/humrep/dez291

要約:21〜34歳ドナー卵子提供者で顕微授精を実施する22名を対象に、卵胞ひとつひとつの直径(短径x長径)を測定後に穿刺吸引を行い、1個ずつ卵子が識別できるようにして培養しました。計測できなかった卵胞や卵子が2個確認されたものは除外し、317個(96.1%)の卵子が対象になりました。成熟卵(MII)80.4%、MI卵 9.1%、GV卵 9.8%であり、卵胞の大きさは卵子の成熟率と強い正の相関を認め(ROCのAUC = 0.87)、胚盤胞到達率と弱い正の相関を認めました(AUC = 0.59)。しかし、卵胞の大きさと正常受精率(2PN率)との関連はなく、胚盤胞のグレードや正常胚率との関連もありませんでした。なお、正常胚率は、54.3%(51/94)でした。

 

解説:卵胞の大きさが大きいほど、卵子の成熟率、受精率、良好分割胚率、胚盤胞到達率が良いとの報告がありますが、中等度の方が良いという論文、卵胞の大きさは無関係という報告もあり、結論が得られていませんでした。本論文は、PGT-A正常胚にエンドポイントを定めた初めての報告であり、卵胞の大きさは卵子の成熟率や胚盤胞到達率と正の相関がありますが、正常胚率とは無関係であることを示しています。卵胞が小さいからと諦めるのではなく、成熟卵が取れれば均等に正常胚のチャンスがあるとしています。

 

下記の記事を参照してください。

2014.1.17「☆☆「良い卵子」とは?