最近読んでよかった本 その93 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった3冊を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

私のブログでは月2回本の紹介をしています。

何故本を紹介しているかについては、2016.9.29「「最近読んでよかった本」の新たな効能?「ニュートラルな気持ち」へ!」をご覧ください。

 

「完全なる首長竜の日」乾緑郎

第9回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作で、海堂尊以来の満場一致で大賞受賞となった作品。早川書房「ミステリが読みたい」2012年国内19位。少女漫画家の「和淳美」は、自殺未遂を起こし意識不明の弟「和浩市」と「西湘コーマワークセンター」で、最新医療技術「センシング」により対話を続けていた。浩市がなぜ自殺を試みたかは不明であり、その原因を探らなくては、仮に浩市が意識を取り戻したとしても再び自殺を繰り返す恐れがあると、担当する精神科医「相原」は言う。その頃、淳美が長期連載していた漫画「ルクソール」の打ち切りが突如決まり、「仲野泰子」の息子「仲野由多加」も浩市と同様に自殺未遂を起こし「西湘コーマワークセンター」でセンシングによる治療を受けていた。一方「センシング」を介さずに対話できる「憑依(ポゼッション)」も起こりうることを淳美は知る。次第に淳美の身の回りで不可解なことが起こり始め、淳美は夢と現実の区別がつかなくなっていく。物語は意外な方向へ向かってクライマックスを迎える。

 

 

「ジャイロスコープ」伊坂幸太郎

デビュー15年目という節目を記念して企画された伊坂幸太郎初の短編集です。短編は全て依頼原稿のようであり、それぞれがその時のテーマに則って書かれたもので、全く異なるタイプが6編。最後の7編目は書き下ろしで、それまでの6編を上手く繋げたもの。それぞれの短編に伏線と回収があり、最後で全ての伏線を回収。お見事です。さすが伊坂幸太郎。

 

「公開処刑人 森のくまさん」堀内公太郎

第9回「このミステリーがすごい!」大賞の最終選考で受賞に至らず落選したが、大幅に改訂し翌年第10回「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉(編集部推薦)として出版された異例の作品。世の中のサイテーな人間を処刑し続ける連続殺人犯「森のくまさん」。掲示板に犯行声明を出しながら次々と殺人を犯すシリアルキラーは、童謡「森のくまさん」を歌いながら連続殺人事件を繰り広げる。警察は血眼になって捜査を行うが、捜査をあざ笑うかのように犯行は繰り返される。殺されたのがレイプ常習犯や虐めを助長する鬼畜教師などということもあり、ネット上では次第に犯人を支持する者が増え、犯人を神様扱いする「森くまウォッチャー」が多数存在する事態になる。「森のくまさん」は一体誰なのか?可愛らしいイラストとは裏腹に、どす黒くなかなか面白い作品です。