ディナゲストによる月経困難症と痛みの軽減 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本魯文は、ディナゲストによる月経困難症と痛みの軽減について検討したものです。

 

Fertil Steril 2020; 113: 167(日本)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.09.014

Fertil Steril 2020; 113: 82(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.10.023

要約:20施設から月経困難症の方235名を対象に、ディナゲスト(0.5、1.0、2.0 mg/d)群、ヤーズ(ドロスピレノン3mg+エチニルエストラジオール20μg)群、プラセボ群の5群に分け(ダブルブラインドランダム化試験)、12週間投薬を行い、月経困難症スコア痛みスコア(VAS)で治療効果を評価しました(第2相試験)。結果は下記の通り。

 

            プラセボ        ディナゲスト        ヤーズ

                   0.5mg   1.0mg   2.0mg   

月経困難症スコア治療前   4.6     4.4    4.5     4.3     4.6

月経困難症スコア治療後   3.1     1.8    1.4     1.0     2.2

 P値           〜     0.003  <0.001   <0.001     〜

 

VASスコア治療前     62.5    63.2    60.4    62.2     61.6

VASスコア治療後     41.5    27.4    16.1    11.5     24.3

 P値           〜     0.003  <0.001   <0.001     〜

 

P4濃度治療前       12.5    12.1   13.4     11.8     11.0

P4濃度治療後       8.4     2.7    0.9     0.7      0.8

 P値           〜     0.001  <0.001   <0.002    <0.004

 

子宮内膜厚治療前     12.1    11.6    10.8    11.5     11.2

子宮内膜厚治療後      9.2     6.7     5.3     5.2       4.8

 P値           〜     0.003  <0.001   <0.001    <0.001

 

E2濃度治療前        168     146   143    149     126

E2濃度治療後        145     237   116    47      13

 P値           〜       〜    〜   0.017     <0.009

 

解説:本魯文は、ディナゲストによる月経困難症と痛みの軽減について検討したものであり、ディナゲスト1.0mgE2低下がなく最も効果的であることを示しています。コメントでは、本論文は貴重な報告であるとしながらも、投与期間が12週間と短いためその後の状況が不明であること、ディナゲスト1.0mgの用量で避妊効果があるかどうかが心配であることを指摘しています。

 

下記の記事を参照してください。

2019.3.19「自然発生の子宮内膜症サルで痛みの研究

2017.11.24「内膜症の新しい治療戦略