Q&A2407 多嚢胞性卵巣だけど多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)ではない!? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 初潮から生理が1~2ヶ月間隔で、来ても不正出血のような茶オリのような物がダラダラと2週間程続く変な生理でした。父子家庭だった事もあり、こんな物なのかな?と特に気にせずに過ごしていました。

21歳の頃夜中の突然の大量出血でびっくりし、ナプキンが無かったので慌ててコンビニまで走りました。翌日、近所のレディースクリニックを受診した所、多嚢胞性卵巣が発覚。しかし大量出血の原因はよくわからず…記憶が曖昧ですが筋腫や内膜症とかではなく、「○○びらん」と言われたような気がします。そこから結婚し27歳で妊活を始めるまでずっとピルを服用していました。ピルを飲む事で毎月ぴったり生理が来る事もですが、血の色が明るくサラサラしている事にも大変驚きました。子供が欲しいと思いピルを止めた所、そこからピタッと生理が来ず、不正出血すら全くなく、半年後諦めて不妊治療の病院にかかりました。血液検査の結果、多嚢胞性卵巣ではあるもののホルモン値的には多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では無いと言われました。AMHも5.49とそこまで高くありませんでした。しかし、クロミッドだけでは卵胞が育たず、FSH注射をし、自力で排卵しないのでタイミング法の時からトリガーでHCG注射や点鼻薬を使っていました。幸いにもこの度5回目の人工授精にて子供を授かる事ができ年末出産予定です。

①出産後授乳がひと段落した後も生理が再開しない場合は、第2子の妊活まではまたピルを服用するべきでしょうか。第2、第3子を希望しない場合は閉経の時期まで服用しないといけないんでしょうか。またその場合、生理も不正出血も全く無い場合は授乳後いつからピルを飲めば良いのでしょうか。
②以前他の方の質問の回答で、2~3ヶ月に一度は生理を起こした方が良いと書かれていたと記憶していますが、具体的にはどうやって2~3ヶ月に一度生理を起こすのですか。
③症状的には多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)だと思うのですが、違うというのはどういう事でしょうか。

 

A 

①かつては、ピルなどで毎月生理を起こした方が良いとされていましたが、現在では必ずしも毎月生理が来なくても良いことになっています。授乳終了後、2~3ヶ月に一度生理を起こす程度で十分です。そもそも生理を起こす理由は、内膜を定期的に剥離させて、子宮体癌のリスクを低下させるためだけです。従って、閉経の時期まで服用しないといけないこともありません。
②通常の低容量ピルでも構いませんし、卵巣機能不全の治療用のホルモン剤でも構いません。婦人科でご相談ください。
③診断基準(文面からはおそらく下記の2番)を満たしていないため、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)ではないというだけのことであり、このような場合は、多嚢胞性卵巣形態(PCOM)と言います。しかし、診断がどうあれ、やることは一緒です。

 

*PCOSの診断基準(ロッテルダム基準 2003)を示します。
1 稀発排卵 or 無排卵
2 臨床的 and/or 検査で高アンドロゲンの所見
3 多嚢胞性卵巣(2~9mmの小卵胞が12個以上 and/or 卵巣体積が10ml以上)
上記3つのうち少なくとも2つがあった場合にPCOSと診断する
卵胞の分布、間質の輝度・面積の増加は定義には含まない
片側の卵巣のみで 多嚢胞性卵巣と判定してよい
10mm 以上の卵胞がある場合や黄体を認める場合は次の周期を待って判定する
ピルを内服してる女性にはこの基準を用いることはできない
超音波上の 多嚢胞性卵巣所見だけで PCOSと診断することはできない

 

下記の記事を参照してください。

2013.6.3「☆PCOMとは?

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。