卵巣機能低下の方で妊娠成績を最も左右するのは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、妊孕性の低下が予測される方を細かく分類したPOSEIDON分類を用いたコホート研究です。

 

Hum Reprod 2019; 34: 1030(オランダ)doi: 10.1093/humrep/dez051

要約:2011〜2014年にオランダの多施設共同研究OPTIMISTスタディに登録した1515名の女性(44歳未満)の中で、妊孕性の低下が予測され初回体外受精を実施する551名を対象に、POSEIDON分類を用いて妊娠成績を前方視的に検討しました。なお、PCOS、内分泌代謝疾患、ドナー卵子、婦人科の器質性疾患のある方を除外し、刺激はFSH 150IUの固定量で実施しました。18ヶ月の治療を行った場合の出産率は全体で54〜57%でした。POSEIDON分類別の18ヶ月治療による出産率は下記の通り。

 

          出産率

POSEIDON 1a群  63〜66%

POSEIDON 1b群  67〜69%

POSEIDON 2a群  41〜42%

POSEIDON 2b群  52〜55%

POSEIDON 3群  58〜60%

POSEIDON 4群  37〜41%

 

なお、POSEIDON分類に当てはまらない方(妊孕性の低下が予測されない方)の18ヶ月治療による出産率は、35歳未満で72%、35歳以上で58%でした。

 

解説:POSEIDON分類(Patient-Oriented Strategies Encompassing IndividualizeD Oocyte Number)は、体外受精実施の際に妊孕性の低下が予測される方を細かく分類したものであり、より均一なグループ分けによって適切な治療方針を決めるツールとして登場しました(Fertil Steril 2016; 105: 1452)。詳細を下記に記します。

 

POSEIDON 1群:35歳未満、AFC 5以上あるいはAMH 1.2以上

      1a群:卵巣刺激での採卵数3個以下

      1b群:卵巣刺激での採卵数4〜9個

POSEIDON 2群:35歳以上、AFC 5以上あるいはAMH 1.2以上

      2a群:卵巣刺激での採卵数3個以下

      2b群:卵巣刺激での採卵数4〜9個

POSEIDON 3群:35歳未満、AFC 5未満あるいはAMH 1.2未満

POSEIDON 4群:35歳以上、AFC 5未満あるいはAMH 1.2未満

 

本論文は、この分類法に基づいた妊娠成績を前方視的に検討したものであり、体外受精実施の際に妊孕性の低下が予測される方の中で妊娠成績を最も左右するのは、年齢と卵巣の反応性(採卵数)であることを示しています。非常に洗練されたエレガントな研究です。