卵子凍結:オープン法 vs. クローズド法 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、卵子凍結のオープン法とクローズド法の成績をドナー卵子を用いて検討したものです。

 

Hum Reprod 2019; 34: 989(スペイン)doi: 10.1093/humrep/dez045

要約:2014〜2016年ドナー卵子凍結を実施した83名のドナー(少なくとも12個以上の成熟卵子を採卵できた方)を対象に、6個ずつオープン法とクローズド法で卵子凍結を行い、受精から妊娠成績を前方視的に検討しました。ドナー年齢は平均24.8歳、レシピエント年齢は平均41.2歳、BMIは平均23.8でした。融解卵子の生存率はオープン法(88.9%)よりクローズド法(94.5%)で有意に高くなっていましたが、受精率はオープン法(69.8%)よりクローズド法(57.1%)で有意に低くなっていました。このため、臨床妊娠率、妊娠継続率、出産率は2群間で有意差を認めませんでした。

 

解説:凍結した検体の保管方法について、オープン法は他の検体からの感染リスクが懸念されるため、クローズド法が望ましいという考えがあります。しかし、実際にはオープン法で凍結されていることがほとんどであるのが現状です。本論文は、卵子凍結のオープン法とクローズド法の成績をドナー卵子を用いて検討したものであり、卵子の生存率と受精率を相殺する格好になるため、妊娠成績は同等であることを示しています。成績が同じであるなら、今後はクローズド法にシフトしていくことになると思います。