Q&A2083 夫44歳、妻41歳、流産3回、PCOS | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2018.9.28「Q&A1965 培養成績が良くありません」の質問の続きです。
採血結果は下記です。
25-OHビタミンD 37.3 ng?(おそらく37.3 ng/mL)
DHEAS 2.90 ng?(おそらく290 μg/dL)
テストステロン 46 dL?(おそらく46 ng/dL)
HOMA-R 0.92

夫44歳(特に異常なし)、妻41歳(PCOS、AMA 64.2?(おそらく64.2 pM))、流産3回
採卵2回 アンタゴニスト法
1回目は以前の質問に詳細書いてます。
2回目は10個とれG2 9個 G31個、2日間培養 4分割G1G2 -1個 6分割G1G2 -1個G2G3-1個、退行卵2個 受精しなかった4個になります。この5個を全て凍結して、移植周期にFISH検査をしました。2回目採卵時の2個が変性し、3個FISH検査をして、1個が15番トリソミー、1個が16番トリソミー+22番モノソミーで、1個移植(5BB)できました。しかし、陰性に終わりました(バイアスピリン服用)。

 

これからどの様に治療していけば良いのか判らなくなってしまいました。流産3回していたので、全部では無いがFISH検査をする事になり、するも妊娠せずです。卵子の加齢でしょうか。松林先生から勧められた血液検査の結果も特になにもなかったので、これからどの様に私が努力していけば良いのか行き詰まってしまいました。リンパ球移植のお話もでましが、流産予防の為だけであって卵子の為ではないと。2回共体外受精です。次回は顕微授精をするつもりですが、FISH検査をした方が良いのか。何をすれば良いのかわからなくなってしまいました。


1回目の採卵後に一度生理がきたら、2度目の採卵だったのですが、見送りました。自己判断です。採卵→生理→生理終了5日目後に必ず不正出血をします。前回ピルが合わず、ルトラールを10日間のみ生理日数、基礎体温低温期になっても生理が来ずに卵胞チェックしたら21㎜あり、不正出血なのか、生理なのかわからず、そこからはピルを21日間服用終了後5日目に生理が始まり(その時は基礎体温は高温期のまま2日間あり、生理3日目で低温期になり自己注射開始)2回目採卵誘発を始めました。2回目は左卵巣が子宮の後ろにあったらしく、子宮を刺して採卵してます。初めての経験です。採卵後→生理→移植周期→移植→陰性でした。
 
子宮を刺しての採卵は着床障害になりますか。2度目採卵後から左腹部にずっと違和感がありますが、卵巣の腫れなどはありません。内科にて腹部エコーをしてもらいましたが、特に異常はありません。
PCOSはピルで調整してからの採卵を望む方が良い卵子がとれますか。ピルは1度目はあわなかったのですが、2度目服用時は大丈夫でした。PCOSの人は採卵誘発方法やトリガーの時間などは難しいのでしょうか。採卵をどの時にするかにもよりますか。卵胞の大きさはどれくらいが目安なんでしょうか。22㎜~25㎜くらいでしょうか。
色々考え過ぎるのもいけないのでしょうが、年齢、経済的を考えて、治療の終了を考えなければならなくなりました。
貯卵もしたいのですが続けて高刺激に私の場合は合わないのか。一度休むと悪いのか。そこも気になります。

 
A いくつか気になることがあります。
まず、単位が正確に記載されていませんので、追加で採血していただいた数値が基準値を満たしているか不明です(おそらくという表現でカッコ内に記載したもので合っていれば基準値を満たしています)。AMHの単位も記載されていませんでしたが、おそらく64.2 pM=8.99 ng/mLだと思います。以上を前提として回答いたします。
 
高刺激と言っておられますが、正直申し上げて、刺激が不十分だと思います。もしAMH 8.99 ng/mLでしたら、20個程度取れるのではないかと思います。PCOSの方は、OHSSを恐るあまり、刺激を加減すると全然取れなくなります。その方に合った薬剤を使用することが肝心です。刺激薬剤の変更だけで、受精卵の状態が劇的に変わることがあります。
 
FISH検査では、全ての染色体を網羅できているのでしょうか。もし全部を網羅できていないとすれば実施する意味があまりありません。全部網羅できているとしても、FISH検査では部分的な染色体の欠失を知ることはできませんので不備があります。もし実施するのであればNGS法が良いでしょう。
 
リンパ球移植は2000年に世界的に有効性が否定されました。米国では全面禁止です。日本ではいくつかの施設で実施されているようですが、RA 26のような自己抗体がある方には禁忌です。血液凝固FXII因子活性 55%ですので、私ならヘパリンを使います(2018.9.28「Q&A1965 培養成績が良くありません」参照)。
 
また、子宮を刺しての採卵と着床障害の関連はありません。子宮を刺しての採卵は日常的に普通に行われています。かつては、PCOSはピルで調整してからの採卵が良いとされていましたが、ピルを用いると一時的に卵子が減りますので、最小限にしておいた方が良いでしょう。PCOSの方は未熟卵子が取れやすいですので、ダブルトリガーが良いことが多いです。また、イノシトールサプリ(4g/日)が有効とされています。採卵決定の際の卵胞の大きさは、その方によって適切な値がありますので、何回か実施した結果を踏まえて最適なパターンを決めるのが良いでしょう。POCSの方は、例えば20個以上卵子が取れた時はお休みする方が良いようです。
 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。