☆体外受精における一卵性双胎のリスク因子は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、体外受精における一卵性双胎のリスク因子について検討した日本産科婦人科学会からの報告です。

 

Hum Reprod 2018; 33: 1984(日本)doi: 10.1093/humrep/dey294

Hum Reprod 2018; 33: e1(編集長)doi: 10.1093/humrep/dey324

要約:2007〜2014年に日本産科婦人科学会に登録された単一胚移植937,848件のデータを後方視的に分析しました。臨床妊娠率は29.5%(276,934/937,848)であり、このうち双胎妊娠が1.56%(4310/276,934)、品胎妊娠(三つ子)が0.04%(109/276,934)でした。性別が異なる双胎や品胎を除外し(移植以外で生じた自然妊娠の除外)たところ、一つの胚が二つに分かれる確率(スプリット率)は1.36%と計算されました。スプリット率増加に寄与する因子をロジスティック回帰分析により分析したところ、凍結融解胚移植(オッズ比1.34倍)、胚盤胞移植(オッズ比1.79倍)、補助孵化療法(オッズ比1.21倍)の3つが挙げられました。

 

解説:2008年に日本産科婦人科学会は世界に先駆け、多胎妊娠防止策として「原則として単一胚移植」にするよう勧告を発表しました。その後、急速に多胎妊娠が減少し、海外でも単一胚移植を推進する現在の流れが誕生しました。単一胚移植でも双子ができることがありますが、これは一つの胚が二つに分かれる(スプリット)ためです。本論文は、日本産科婦人科学会の100万件にも及ぶメガデータから、スプリット率は1.36%であることを示しています。また、スプリットのリスク因子は、凍結融解、胚盤胞培養、補助孵化療法などの胚操作によることを明らかにしました。編集長は、本論文を今月一押しの論文として取り上げ、絶賛しています。