本論文は、ミトコンドリアDNA含有率と胚の状態について検討したものです。
Fertil Steril 2018; 109: 110(イタリア)doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.09.022
要約:2016〜2017年に胚盤胞のPGSを実施した402名465周期のTE細胞(胎盤になる細胞)のミトコンドリアDNAを抽出し、その量と関連する因子を後方視的に検討しました。BMIとミトコンドリアDNA量には正の相関を認め、P4とミトコンドリアDNA量には負の相関を認めました。また、異常胚あるいは胚盤胞のTEグレード低下に伴い、ミトコンドリアDNA量が増加しました。
解説:胚のミトコンドリアDNAは桑実胚までの段階では複製が起こらず、胚盤胞の段階で生じることが明らかにされています。また、ミトコンドリアDNA量は胚の酸素消費量に比例することも報告されています。本論文は、ミトコンドリアDNA含有率と胚の状態について検討したものであり、ミトコンドリアDNA含有量の増加は、胚の状態の低下につながることを示しています。下記の記事でご紹介した「ミトコンドリアDNAが少ない方が着床率の高い良好胚」であることを示す報告とも一致します。まだまだ不明な点も多い領域ですので、今後の研究の成果を待ちたいと思います。
下記の記事を参照してください。
2015.9.27「ミトコンドリアDNA量と着床率の関係」