単一胚移植による双子の確率は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、単一胚移植(SET)による双子の確率を米国の全国統計(SART)から示したものです。

 

Fertil Steril 2018; 109: 118(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.10.003

Fertil Steril 2018; 109: 63(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.10.027

要約:2010〜2013年に採卵と単一胚移植(新鮮胚及び凍結胚)を実施した35歳未満の女性を対象に双胎妊娠の件数とその性別をSARTデータから分析しました。32,600周期の移植のうち15,143件(46.5%)の妊娠が成立し、双胎妊娠は249件(1.6%)でした。双子の性別が同じだったのは226件、性別が異なったのは23件であり、Weinbergの法則を用いて1卵性および2卵性双胎を計算により算出すると、1卵性が203件(=226-23)、2卵性が46件(=23x2)となります。つまり、単一胚移植の双胎妊娠の18.5%(46/249)が2卵性双胎だったことになります。双子の性別が異なった双胎妊娠のリスク因子は原因不明不妊(4.33倍)と高BMIであり、双子の性別が同じだった双胎妊娠のリスク因子は新鮮胚移植(1.4倍)でした。

 

解説:米国でも、遅ればせながら単一胚移植(SET)を取り入れる施設が増えてきました。双胎妊娠による母体および胎児の妊娠出産に伴うリスクが2〜16倍になることを考慮した対策です。しかし、1個移植の場合でも双子になることがあります。SET後の双胎妊娠の確率は2.2〜2.3%との報告があります。多くの場合は移植後に胚が二つに分かれることによりますが、この場合は双子の性別は同じになります。一方、双子の性別が異なるケースもあり、この場合は2つの胚が存在していたことを意味します。つまり、SETと同時に自然妊娠(タイミング妊娠)が成立していたのではないかと考えられます。コメントでは、BMIが高い方では採卵が難しいいケースがあるため、採卵しそこなった卵子が存在していたのではないかと考察しています。その理由として、両側卵管閉塞の方と高度男性不妊の方には、双子の性別が異なる双胎妊娠が一例もみられなかったことを挙げています。なお、本論文の症例は35歳未満の女性における検討であるため、妊娠率は良好であり、年齢が高い方には当てはまりません。コメントでは、当たり前のことですが、卵胞は全て吸引しましょうと結んでいます。