本論文は、人工授精の実施方法について検討したものです。
Hum Reprod 2017; 32: 1835(オランダ)doi: 10.1093/humrep/dex223
要約:これまでに発表された論文から、精液採取法、精子調整法、人工授精の方法、使用器具について検討しました。論文のエビデンスレベルはいずれも低いものばかりであり、最適な方法としての一致したコンセンサスを得るには至りませんでした。
解説:驚かれるかもしれませんが、人工授精の実施方法について標準化されたものはありません。かろうじて2010年のWHOのガイドラインと2013年のNICEガイドラインがありますが、これを見直す時期に来ているのではないかというのが本論文の主張です。
なお、参考までに「WHOによる人工授精のガイドライン」を示します。
精液採取法:禁欲期間2〜7日、院内のメンズルームで採取するか1時間以内なら自宅採取も可
精子調整法:精液は除去すべき(子宮収縮の回避のため)、調整法は精液所見による(正常所見ならスイムアップ法、その他は密度勾配法など)、両性イオンの培養液使用(pHを一定にするため)、培養器は5%CO2ガス
人工授精の方法:特に推奨はない(NICEではトリガー使用で排卵時期と合わせることを推奨)
使用器具:特に推奨はない
人工授精後の安静度:特に安静にする必要はない