Q&A1678 31週死産1回、流産2回 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 現在34歳、2012年から不妊治療を開始し、死産・流産を繰り返している状況で、今後の治療の進め方に悩んでおります。
・2012年 不妊治療を開始(当時29歳)
・2015年 採卵(2回目)(AMH値2.51)
・2015年 IVF-BTにて初めて妊娠<1人目>
 2016年 31週死産(子宮内胎児死亡)、
・2017年 11週流産<2人目>
・2017年 8週心拍確認できず流産<3人目>

2人目の流産後に下記不育症検査を受けて今後の出産に影響はなさそうと判断されました。
・抗核抗体(ANA)(-)
・グラジミアt抗体(-)
・INR(PT)0.91
・APTT 28.1秒
・プロラクチン 24.4 ng/ml
3人目の流産後に胎盤の染色体検査を受けて、転座などは確認されず、通常に起こり得る染色体異常と判断されました。37細胞中29細胞は45,X、8細胞は46,XY核型のモザイク

2017年(AMH値1.48)採卵した受精卵がなくなった為、再度アンタゴニスト法で採卵しましたが、注射が効かず、取れた卵は2個。その内前核期卵1個のみしか残りませんでした。(前回は取れた卵は14個。その内胚盤胞4個、前核期2個)

病院からは、①アンタゴニスト法の薬が効きにくかったことと、②薬の効果が残っているうちに再度採卵すべき、③今回1個しか卵が取れなかったこと、この3点から簡易法での連続採卵を勧められています。そこで松林先生にお聞きしたいのは、先生ならどのような治療を勧められますでしょうか。また、追加の不育症検査か必要性かどうかもアドバイスをいただければと思います。現在通院している病院は「卵の質が全て」と言う考え方で、不育症治療は重視しておらず、着床前診断もできない状況です。

 

A まず、不育検査が圧倒的に少なく、これだけでは不育原因がないとは言えません。おそらく自費検査がすべて抜けていると思います。不育専門のクリニックでの検査をお勧めします。

次に、流産胎児染色体は明らかなモザイクですが、XOとXYのモザイクは通常あまり見られないタイプのモザイクです。夫婦染色体検査をお勧めします。

2回目の採卵では、注射が効かなかったのか、その周期の条件がたまたま悪かったのかわかりません。私なら、DHEAS、テストステロン、25OHビタミンD検査を行い、卵子の改善策を打ってから次回の刺激周期に臨みます。

文面から推察するに、現在通院中のクリニックでは、アンタゴニスト法1種類、簡易法1種類しかないのではないかと思います。その方に適切な薬剤の選択が望まれます。また、「卵の質」を重視されるのであれば、着床前スクリーニング検査を実施すべきだと思いますが、考えが矛盾しているように思います。