米国で新鮮胚移植が向いていない場合 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

米国では未だに新鮮胚移植が全盛ですが、徐々に凍結融解胚移植へのシフトが見られます。本論文は、米国で新鮮胚移植が向いていない(全胚凍結すべき)方は、トリガー当日のP4>1.0で高齢の場合であることを示しています。

 

Fertil Steril 2017; 108: 254(米国)

要約:2009〜2015年米国12箇所の施設で胚盤胞移植を実施した方13,791名を対象に、1,455名の全胚凍結を実施した方とそれにマッチさせた新鮮胚移植を実施した方1,455名の妊娠成績について、後方視的検討を行いました。全体としても、新鮮胚移植(45.3%)より凍結融解胚移植(52.0%)での妊娠継続率が有意に良好でしたが、トリガー当日の黄体ホルモン(P4)が1.0以下ではこの有意差は消失し、P4>1.0で有意差が認められました。また、加齢とともに有意差の増加が見られました。

 

解説:米国では未だに新鮮胚移植が全盛ですが、徐々に凍結融解胚移植へのシフトが見られます(2006年から2012年で凍結融解胚移植が1.8倍に増加)。米国でもやっと凍結技術が進歩し、凍結胚移植のメリットを享受できるようになったわけです。そこで最近、米国から凍結胚移植の論文が増えています。本論文は、米国で新鮮胚移植が向いていない(全胚凍結すべき)方は、トリガー当日のP4>1.0で高齢の方であることを示しています。P4増加により着床の時期がズレてしまうことはよく知られています(内膜のスピードが早く進む)。もちろん、本研究は後方視的検討に過ぎませんので、前方視的なランダム化試験が必要です。