Q&A1619 39歳、海外で治療 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 39歳、海外で治療

タイミングを取り始めて約2年、排卵誘発タイミング 3回、体外受精2回行いましたが、妊娠には至っていません。


自然妊娠→12週流産
AMH 9.9(単位不明)、夫 精液検査 OK

排卵誘発タイミング

①Puregon50x7+Puregone75x2
②Puregon50x7
③Puregon50x7
体外受精
①アンタゴニスト法、Puregon300x9+トリガー、採卵10個、受精6個、Day5 胚盤胞1個新鮮胚移植、2個をPGSへ提出→2個とも異常

②ショート法、Puregon400x9日間+トリガー、採卵20個、受精12個、Day5 胚盤胞2個新鮮胚移植、妊娠判定陽性HCG 180→35→5、化学流産

担当医の見解は「原因は年齢による卵子の老化、染色体異常でることは明らかで、低刺激(Puregonを300に戻す、もしくは体外受精は私の場合はやってもしょうがないのかもしれない、排卵誘発タイミング法に戻すのも一つの方法)にして、何度も採卵→Day5 新鮮胚を移植を繰り返し、いつか染色体異常でない卵子ができることを待つしかない」と言われました。この先生の方針は「Day5胚盤胞の新鮮胚移植がベストで、とくに私の場合は、正常な卵子ができる確率も低いので、Day1受精卵の移植はしない、PGS検査をするまでもなく(検査費用も高価)新鮮胚をすぐに移植したほうがよい」と言われました。また、卵子の質に問題があることが確かなので、卵子についての遺伝子的な検査も不要であり、そのほか、不妊に関する検査もAMHおよび夫の精子検査以外、行っておりません。

Q1 この2回の体外受精結果をみて、次はどのような刺激方法が良いのでしょうか(クロミッドかフェマーラなども含めて)。
Q2 Day5胚盤胞の新鮮胚移植がベストであるのか。
Q3 卵子の改善という意味で、葉酸はもちろんのこと、DHEA200㎎およびコエンザイムQ10を取っています。そのほかになにか取るべきものはありますか。
Q4 今後も希望を持って治療を続けても大丈夫と言えますでしょうか。もしくは、正直厳しいでしょうか。

A 海外での治療には様々なハードルがあります。言葉の壁、人種の壁、宗教の壁、、、など。

A1 AMHの単位の記載がありませんが、おそらくng/mLだと仮定して話を進めます。AMH 9.9ng/mLだとすれば、卵子は沢山あるはずです。しっかり刺激して、しっかり採卵すればチャンスは十分にあります。PuregonはFSH製剤ですので、LHが入っていません。卵胞発育にはLHも必要ですので、私ならHMG製剤を用いるか、FSH製剤にLH(HCG)を補充するかのいずれかの刺激を用います。また、OHSS予防のために、フェマーラを最初の2日間だけ使用します。

A2 (国名は記載しませんが)質問者さんのいる国は白人が多いですので、白人に有効なDay5胚盤胞の新鮮胚移植が勧められたのだと考えます。東アジアでは、凍結胚移植の成績が圧倒的に良いです(全ての年齢で新鮮胚より凍結胚が10%成績良好)。担当医は人種による違いをご存じないのだと思います。

A3 卵子の改善として、医学的に証明されているのは、DHEAS、テストステロン、25-OHビタミンDが不足している場合に限り、補充が有効だということです。ぜひ、この3種類の項目を採血してみてください。

A4 39歳は日本の妊娠治療の患者さんの中では若い部類に属します。まだまだできることが沢山あると思います。日本人は、日本での治療をお勧めいたします。一方で、PGS検査が可能な国でしたら、38歳以上の方にはPGSの有用性が証明されていますので、ぜひ全ての胚盤胞に対して検査を推奨します。この方が、赤ちゃんを授かるまでの費用も時間も短縮できるからです。