Q&A1536 採卵誘発によって胚発生が変わるか | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 現在、他院に通っています。その治療の中で疑問点があり、ぜひ、松林先生のご意見をいただきたいと思いメールをさせていただきます。質問の内容は、採卵誘発の方法(薬の違いなど)によって、胚盤胞のグレードが変わるのかどうかについてです。

妻、34歳9か月、AMH 1.07(計測は半年前)、CD6の採血でE2の値が低めと言われる、黄体ホルモンが不足気味と言われる
夫、41歳10ヵ月、精索静脈瘤が有り(手術はしていない)、精巣が11mLで小さいと言われる、精液検査で高速運動率が3.09%で精子無力症と言われる、正常形態率が1.5%で不良

上記の診察結果により、初めて採卵を実施しました。CD3よりクロミッド5日間(1日2錠)+ゴナピュール300単位×3回(CD3,4,6)+HMGフジ300単位×1回(CD7)+HCG5000(採卵36時間前)、採卵6個(内、未成熟卵1個)、全てICSIを実施
精液所見(フレッシュ)
      〔調整前〕⇒〔調整後〕
・精液量:  1.4ml⇒0.2mL
・精子濃度:1434万乗⇒701万
・精子運動率:18.6%⇒48.81%
・高速運動率:7.87%⇒16.17%

3日目培養結果
・桑実胚初期:3個
・7cell 〔G2〕:1個
・6cell 〔G3〕:1個
・未分割:1個

5日目培養結果
・胚盤胞:1個 4BB⇒ ○
・胚盤胞:1個 4CC⇒ ×
・eBL:1個⇒6日目に胚盤胞になる(4CC)⇒ ×
・8cell:1個⇒ ×
・1cell:1個⇒ ×
・ecom:1個⇒ ×

今回は全て胚盤胞凍結を目指しました。
私が通っている病院では、グレードがCCの胚盤胞は凍結しない方針のため、凍結できたのは4BBの1個のみです。採卵数が6個で、凍結できた胚盤胞が1個という結果は少ないと感じております。主治医には、今回胚盤胞のグレードが悪かった理由が卵なのか、精子なのか、誘発の薬なのか分からない。次回の採卵方針は直前に検討するが、今回の採卵誘発方法は悪かったとは思わないとおっしゃっておりました。私としてはアンタゴニスト法なども気になっておりますが、今の病院ではアンタゴニストは費用が高く、男性不妊やAMHが低い人にはあまり向いていないと言われています(おそらくお金をかけて高刺激をしても、よい質の卵を多数とるのが難しいということだと思います)。このような私が、次回また採卵をする際、同じ方法でもよいのか、採卵誘発の方法や薬の種類を変えてみる価値があるのかどうか、ある場合、松林先生ならどのような方法を検討するかお聞かせ頂けますでしょうか。

また、胚盤胞のグレードは刺激方法を変更するなどで改善することが出来るのでしょうか。卵や精子の質の問題で運に任せるしかないのでしょうか。

A 卵胞発育には、年齢とAMHから適切な薬剤の選択が重要です。

私なら、クロミッド1錠+フェリング150単位+富士150単位をCD3から連日投与します。排卵抑制には、アンタゴニストを用います。なお、アンタゴニスト法は、全ての方に適応できる方法です。刺激法の変更により劇的な改善が見られることも少なくありません。運ではなく、綿密な計算が大切だと思います。

 

また、グレードがCCの胚盤胞を凍結しない方針のクリニックがあるのも事実ですが、グレードがCCの胚盤胞でも妊娠される方はおられますので、廃棄してしまうのは極めて勿体無いことだと思います。20代の方でしたら普通に妊娠できますし、元気な赤ちゃんが大勢誕生しています。