自然妊娠率の予測 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、自然妊娠率を予測するモデルを作成したという報告です。

 

Hum Reprod 2017; 32: 346(オランダ)

要約:2002〜2004年にオランダの38施設4999組の夫婦に対して一般不妊検査を行い、無治療で妊娠するまでの経過を前方視的に観察したものです。妊娠された方は1053名(21%)おられ、妊娠まで平均8ヶ月(1〜21ヶ月)でした。なお、両側卵管閉塞、無排卵、総運動精子数100万未満の方は除外しました。Hunaultモデルと同じ項目(女性年齢、不妊期間、妊娠歴の有無、精子運動率、紹介元の診療科)を用いて、自然妊娠率予測のモデルを作成しました。一般不妊検査を行ってから1年以内に妊娠する確率は全体で27%、一般不妊検査を行ってから半年間妊娠していない場合にそこから1年以内に妊娠する確率は全体で20%、一般不妊検査を行ってから1年間妊娠していない場合にそこから1年以内に妊娠する確率は全体で15%、一般不妊検査を行ってから1年半妊娠していない場合にそこから1年以内に妊娠する確率は全体で13%となりました。それぞれの方が上記の5項目を入力すると得点が算出され、合計点を入力するとそれぞれの方の妊娠率が計算できます(論文のp349の図2を参照、入力例はp350の図3を参照)。

 

解説:自然妊娠率の予測のモデルとして、Hunaultモデル(Hum Reprod 2004; 19: 2019)がありますが、現時点からの予測しかできず、1年後あるいは2年後にはどうなっているかを予測することができませんでした。本論文は、その部分も予測できるように改良したモデルです。論文の図2へ入力すれば、たちどころに確率が計算できます。非常に興味深い論文です。著作権の関係からその図を載せられませんので、興味のある方は論文を参照してください。