Q&A1346 精巣腫瘍術後 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 妻33歳、夫32歳

タイミング法とフーナーテストを2周期行い、結果は良好で2周期目に妊娠しましたが、胎嚢確認後自然流産しました。医師の指示により、2回生理を見送った後通院再開しましたが、その間に夫が精巣腫瘍を患いました。術前精液検査を行ったところ、濃度が160万しかありませんでした。精巣腫瘍は幸いstage1のセミノーマで、病巣摘出のみで経過観察となりました。術後数回精液検査を行いましたが、濃度は100~1000万(平均で500万程度)で自然妊娠は厳しいとのことで顕微授精を進められました。
2回採卵を行いました。妻のAMHは1.72で、生理3日目からクロミッド、隔日ゴナールエフ150の自己注射による刺激法でした。2回とも採卵2日前の採血でE2は1500程度、卵胞は5~6個見えるといわれましたが、採卵できたのは1回目2個(①2日目4分割胚grade1,②5日目胚盤胞4BC)、2回目3個(③1PN,4分割にて分割停止、④5日目胚盤胞4BC,⑤6日目胚盤胞4BB)でした。③以外すべて凍結、②の胚盤胞を自然周期で移植し、先日女児を出産しました。第2子を希望しております。

Q1 夫の手術から1年経ち、再度精液検査をしましたが、濃度は500万と、変化はありませんでした。医師から、今後精子がなくなる可能性がないとはいえないから、保存更新したほうがよいといわれ更新しましたが、術後年数が経って精子がなくなるということはあるのでしょうか。また、病気前は自然妊娠するほどの精子があったのですから、今後濃度が回復することはないのでしょうか。

Q2 採卵前のE2や卵胞数からみると採卵できた数が少ないと思われますが、どうでしょうか。しかし、4個凍結可能な受精卵ができ、出産できたことから考えるとこの刺激法は私に「合っている」のでしょうか。

Q3 第2子治療のために、凍結している胚の移植から開始する予定ですが、その際④→⑤→①の順でよいでしょうか。(性別に拘りはありません)。また、凍結胚を使い切った後は、やはり顕微授精&同様の刺激法が良いのでしょうか。精子濃度の改善がみられなければ人工授精での妊娠は難しいでしょうか。

 
A 
A1 術後年数が経つにつれて、精子の状態が悪くなることも良くなることもあります。そういう意味では、凍結更新が望ましいです。
A2 AMH 1.72の方には、隔日のゴナール150単位は弱い刺激だと思います。私なら、クロミッド+フェリング150単位+富士150単位を連日用います。
A3 移植の優先順位は、④→⑤→①の順でよいです。凍結胚を使いきった後は、A2の刺激で顕微授精が良いでしょう。また、精子濃度の改善がみられなければ人工授精での妊娠は難しいと思います。