Q&A1249 均衡型転座の場合 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q妻:35歳、染色体均衡型転座、夫:34歳、染色体異常なし、他の検査は未実施
 
結婚後、基礎体温で約1年半妊娠反応が出ず、その後タイミング療法(クロミフェン1T D5-9、排卵誘発のhCG5000単位)3周期めに妊娠し、2013年8月に第一子出産(健常児、周産期異常なし)
 
その後、第二子に向けて治療再開し、タイミング療法(クロミフェン1T D5-9、hCGなし)3周期めに妊娠しましたが、胎児に染色体異常(不均衡型転座)が見つかり、2016年5月に死産。夫婦の染色体検査を行い、上記診断となりました。
 
こののち、松林先生のセカンドオピニオン外来を受診し、不育症検査の結果、プロトロンビン抗体aPS/PT 31↑、TAT 12.2↑、プロテインS活性 60%↓との結果。妊娠反応陽性後にバイアスピリン1T 内服 ~16w、ヘパリン5000単位2V 朝夕 皮下注~28wとのご指示をいただきました。ありがとうございます。
 
わたしが染色体に均衡型転座を持つため、出産まで至る確率は健常者の約1/2程度、ざっと「普通の人の2倍頑張れば健常児を出産できる」と認識しています。
 
死産後、生理を1回見送ったのちに治療を再開したところ、1周期めで妊娠(クロミフェン1T D3-7、hCGなし)し、妊娠反応陽性後(おそらく4w3d)にバイアスピリン内服とヘパリンを開始しましたが、化学流産となりました。死産、化学流産を経て、今後1周期も無駄にしたくないと考えております。

①今後、化学流産後の治療は、いつ再開したらよいのでしょうか。

流産時の生理(出血)後は休み、次の生理を待つ方がよいのでしょうか。前述のとおり、1周期も無駄にしたくない気持ちですので、このお休み周期が非常に苦痛です。担当の婦人科の先生(生殖医療はご専門ではありません)は「普通は流産後すぐに誘発しないし、育たないかもしれないので、今週期はクロミフェンはやめましょう、タイミングも見ません」という内容のことをおっしゃいました。しかし、わたしとしては、妊娠にマイナスでないのであれば、卵胞が育つ可能性が比較的低くともあるのであれば、誘発してエコーでタイミングをチェックし、妊娠の可能性を上げたいと考えます。
②妊娠を目指す場合、そして妊娠した場合、性交で女性がオーガニズムを感じることは、マイナスでしょうか。避けた方がよい時期があれば、お教えいただきたいと思います。
③第一子は健常児を出産し、次に20週で死産、その次は化学流産と、妊娠期間はどんどん短くなっています。これは何か意味があるのでしょうか。
④また、妊娠に至るまでの期間はなぜか短縮していますが(第一子までに21周期、第二子までに3周期、今回の化学流産までに1周期)、これらは、何か意味があるのでしょうか。偶然なのかとも思いますが、妊娠できるということは励みにしてよいでしょうか。着床促進の可能性もあるでしょうか。
⑤今後妊娠した場合、12wの段階で絨毛検査を受ける予定です。その場合、ヘパリン、バイアスピリンはどのようにしたらよいでしょうか。硬膜外穿刺(17Gまたは18G針)に準じて、ヘパリン4時間前中止、バイアスピリン継続~7日前中止などの対応でよろしいでしょうか。胎児のことを考えたらバイアスピリンは継続したいと思いますが、気にしすぎでしょうか。基本的には、実施施設の基準に従いますが、先生のご意見を伺いたく存じます。
⑥わたしは現在35歳ですし、今後は一般的に妊娠の確率も下がる一方です。そして、主人の方針で、タイミング療法より高度な治療は受けないと決めています(これは納得しています)。諦めたら終わりだとは思いますが、今後、諦めずにタイミングを取り続けて、死産流産を乗り越えて行けば、また健常児をこの手に抱くことができるでしょうか。ずっとずっと、2人の子どもを育てたいと思っていましたので、その夢が叶わないかもしれないと思うと、くじけそうになってしまいます。可能性があるならば、ぜひ、松林先生に「諦めなければ十分に可能性はあります」と、励ましていただきたく存じます。いつも、質問コーナーでの先生のそういった発言に、元気をいただいております。どうかよろしくお願い申し上げます。

 
A 私の考えを記載します。一般的な考え(これまでの常識とされていたこと)とは異なるかもしれませんので、必ずしも担当医のご了解を得られないかもしれません。
①昔は何周期か待つという考えでしたが、私はhCGが測定感度以下になれば、すぐに妊娠を目指す許可を出しています。
②オーガニズムと妊娠に関するデータはないと思います。
③おそらく意味はないと思います。
④これも意味はないと思います。むしろ、早いタイミングで妊娠できて好都合とお考えください。着床促進の方は、毎月妊娠反応が出ると思います。
⑤作用時間から判断するとしたら、ヘパリンは12時間前、バイアスピリンは1週間前と私は考えています。しかし、ヘパリン、バイアスピリンの中止期間について、一定の見解はなく、それぞれの施設で独自の基準で中止しているようです。必ずそれに従ってください。
⑥タイミング療法より高度な治療を受けない場合には、可能性があるとお答えすることはできません。「諦めなければ十分に可能性はあります」とは、高度な医療も含めて出来ること全てを行った場合にのみ成り立ちます。卵子は老化しますので、1人目より2人目の方が妊娠は難しくなります。本当に「2人の子どもを育てたい」のでしたら、ぜひステップアップをお勧めします。
 
下記の記事を参照してください。