Q&A1151 黄体ホルモンアレルギーでは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 海外にて、39歳で自然妊娠した際、胎嚢確認後、5週半ばあたりから蚊に刺されたような蕁麻疹が手足に現れました。内科を訪れたところ原因不明のアレルギー反応ということでBenadrylを処方されましたが、数日でお薬が効かなくなり、蕁麻疹は手足だけでなくお尻、背中、お腹、首へと広がりました。妊娠しているので他に処方できる薬はないと言われて、蕁麻疹に苦しみほぼ寝たきりの状態になり、6週半ばで蕁麻疹がピタリと治まった翌日、出血して流産してしまいました。

生殖内分泌医にも相談したのですが、妊娠とは関係のないアレルギー反応と言われました。後日、PUPPが妊娠初期にでたものであり、だからといって胎児に影響が出たり流産を起こすものではないと言われました。不育症検査もお願いしましたが、年齢が原因と検査してもらえませんでした。

納得がいかずアレルギー専門医を訪れたところ、黄体ホルモンアレルギーである可能性が高いと診断されました。皮下に黄体ホルモンを注入する検査を受けたところ、水膨れとなりアレルギー陽性と診断されました。高温期に発疹は出ないため、卵巣が作る黄体ホルモンではなく胎盤からの黄体ホルモンに対するアレルギーと診断されました。しかし後日、この黄体ホルモンの溶液にゴマ油が入っていたことがわかり、ゴマ油にもアレルギー陽性と出たためはっきりとは診断できませんでした。治療法としてはXolairを開始するよう言われましたが、妊娠もしておらず発疹もなく、副作用が怖く治療は開始しませんでした。

自分で色々勉強し「黄体ホルモンアレルギーによる蕁麻疹は、アレルギー反応で黄体ホルモンが低下し、エストロゲンが優勢になりすぎる時に起こるから、生体内の物質と同じ黄体ホルモンを16週くらいまで補充するとよい」と本で読みました。アレルギー専門医と相談し、とりあえず次に妊娠できたら、抗ヒスタミン剤で対応しながら黄体ホルモン補充を試みる予定でした。

その後、海外から日本へ戻り治療開始。不育症検査をしたところいくつかひっかかりました。
*抗核抗体 40
ループス抗凝固因子 1.01 (中和前38.5秒、中和後38.3秒)
凝固第XII因子 59%
*プロテインS活性 49%
プロテインC活性 91%
胎嚢確認後からヘパリンとバイアスピリンで治療していく予定です。

40歳で人工授精後にうっすらと陽性反応。判定日には陽性反応は消えていました(化学流産)。このときは海外から持ち帰ったPrometriumという黄体ホルモンの座薬を使用。特に症状はありませんでした。バイアスピリンのみ使用していました。
40歳、2回目の体外受精、新鮮胚移植後に陽性判定。日本の医師に処方されたプロゲストロン座薬にて黄体ホルモンを補充。このときは胚盤胞を移植したあたりから口の底の粘膜が剥がれ出し、妊娠判定が出た頃にはそれに加えて舌の表面もピリピリとして、酸っぱいものや熱いものは食べるのが辛くなりました。お世話になっていたお医者さまからは薬が合わなくなったのかもしれない、と言われました。6週目前に出血し流産してしまいました。その後、口の中の粘膜の症状は徐々に治まりました。このときもバイアスピリンのみ使用。胎嚢確認後の6週目半ばからヘパリンを開始する予定でした。
41歳、治療を継続していますが、ソフィア1周期目は大丈夫だったのに2周期目からソフィアを飲むと目の周りが腫れ、顔の皮膚がひどくかゆくなるようになりました。現在はルトラールとプレマリンを組み合わせてソフィアと同じ効果を狙っています。ルトラールとプレマリンの周期も2回目になり、このほど口の中の底の粘膜がまたもや少し剥がれてきたことに気づきました。中には大丈夫な黄体ホルモンのお薬もあり混乱しています。

ホルモンアレルギーなど存在しないと生殖分泌医3人くらいからこれまでに言われています。私は本当に黄体ホルモンアレルギーなのでしょうか。受精卵にアレルギーなのでしょうか。このままでは治療法もなくアレルギー反応から流産してしまうのでは、また将来卵子提供を受けたとしても妊娠自体が不可能なのではないかと不安に感じています。もし他にすべき検査や治療法があればご教示いただきたく思います。

A 間違いなく、黄体ホルモンアレルギーだと思います。アレルギー反応は、初回よりも2回目に重症化しますのが1点目、すべてに共通しているのは黄体ホルモンだけなのが2点目の理由になります。アレルギー反応は、拒絶反応ですので、仮に黄体ホルモンに対する拒絶反応だとしても、同時に胎児をも拒絶してしまう可能性は十分考えられます。したがって、私はいかなるアレルギーも抑えた状態で妊娠を目指すようにしています。つまり、抗アレルギー薬服用とアレルゲンの除去です。今回の場合は、外部から投与する黄体ホルモンは避けるべきですので、自然周期の移植が推奨されます。

ホルモンアレルギーに限らず、どんな薬剤にも自然環境にある物質にもアレルギーがある方は必ずおられます。したがって、最初からアレルギーは存在しないと全否定してしまうのは、医師としていかがなものかと思います。医師は、何事にも中立的で、フレキシブルでなければならないと考えます。

不育については、抗核抗体そのものには病原性がありません。したがって、記載された情報からは、プロテインS活性低下が唯一気になります。しかし、それ以外の項目が全て網羅されているか不明ですので、今一度不育検査の評価が望まれます。また、治療開始時期が本当に胎嚢確認後の6週目半ばでよいのかも併せて再評価が望まれます。つまり、胎嚢確認後からでは、化学流産がカバーできません。