Q&A1035 抗リン脂質抗体陽性の出産後の注意点は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 39歳、2回の初期流産後に、不育症で有名な先生を受診し検査の結果、抗リン脂質抗体が陽性でした。排卵日からのバイアスピリン内服、妊娠反応確認後からのヘパリン注射を経て無事に出産できました。

今までに血栓症の既往はありませんが、今後普通の人よりも血栓に注意したほうがよいのか気になっています。不育症の主治医の先生に伺ったところ、産科で問題になる抗リン脂質抗体症候群と、血栓症になる抗リン脂質抗体症候群は別なので気にしなくて良いとのことでした。

胎盤に血栓ができやすいからバイアスピリンやヘパリンを使用すると思っていたので意外でした。バイアスピリンやヘパリンを使うのは血栓予防のためとは違う意味があるのでしょうか。また、今後妊娠しない限りは、この病気について定期的な検査などは行わなくてもよいものなのでしょうか。

A とてもよくある質問です。
同じ抗リン脂質抗体が陽性でも、血栓の患者さんと不育の患者さんとは異なっています。

子宮や胎盤は血流が遅く、他の臓器と比べ血栓ができやすい臓器です。特に妊娠中は血栓が出来やすい状態です。このため、軽い異常でもバイアスピリンやヘパリンを使用して予防した方が良いと考えられています。逆に言えば、妊娠を目指していない時には血栓を心配する必要はほとんどありません。

また、バイアスピリンやヘパリンは胎盤形成に重要な役割を演じているのではないかと考えられています。こちらの作用も重要であると私は考えています。

そうは言っても、血栓のリスクは完全には否定できませんので、血液サラサラレシピなど、普段から食事に注意するのが望ましいと思います。

下記の記事を参照してください。
2016.2.3「抗リン脂質抗体症候群の不思議」