Q&A1026 妊娠中のレキソタン使用は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 妻32歳、夫34歳
凍結胚の2段階移植で1つ着床し、妊娠13週に入りました。
私は3年半前から我慢できないくらいの肩こり、不眠、目の疲れに悩まされ、抗不安薬(寝る前にレキソタン3mg)を服用してきました。本格的に体外受精が始まる前に、心療内科の先生に色々と調べていただき「最近は催奇形性を否定する論文も出ていること」「私の場合、飲んでいる用量が少ない」ということで、妊娠中も飲んで大丈夫と言われました。妊娠がわかった後も初期から毎日服用しています。授乳はやめたほうが良いから、出産近くなったら減薬→断薬しましょうと言われています。
最近、薬が直接胎児にいってしまうような気がして、レキソタンを2.5mgに減薬してみましたが、とても体調が悪くなりました。抵抗力が落ちた感じで、身体がだるくて寝るのも辛いくらいで、結局3mgに戻しました。産婦人科の先生は心療内科の先生におまかせという感じです。
①こういう場合無理をせず、いまの用量で服薬を続けて体調を整えていた方が良いのでしょうか。
②妊娠中にこういった向精神薬を服用した場合、生まれた子どもを長期的に見て障害(発達障害、自閉症など)を持つ確率は上がるのでしょうか。
③具体的にいつくらいまでに断薬するのが理想的でしょうか。あまり後期まで飲んでいると、赤ちゃんが離脱症状で苦しむと聞いて、やはり早く辞めたいと思っています。

A 赤ちゃんの健康を取るか母体の健康を取るか、究極の選択のように思いますが、私は「健康な母体があっての赤ちゃん」だと思いますので、母体にとって必要な薬剤は服用するのが得策だと考えています。その中で選択する薬剤は、もちろん胎児に安全性が高いものを選ぶべきで、私なら使用経験からデパスかメイラックスを用います。ただし、レキソタンの添付文書には「妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」というお決まりの文言が記載されていますので、この記載の意味するところは、レキソタンの使用には大きな問題はないことを示しています。
①したがって、現在効果のあるレキソタンの用量で服用を続けることが、質問者さんにとっては最も有効だと思います。
②はっきりとしたデータはありません。はっきりダメという場合には、添付文書に禁忌と記載されます。
③レキソタンは、72時間内に70~80%が尿中に排泄されますので、出産の3日前に断薬すれば良いでしょう。出産後は薬剤を再開し、授乳をしない選択が、母児ともに健康状態が最も良い方法だと思います。