本論文は、低反応の方に450単位と600単位のFSH製剤を用いてのランダム化試験(RCT研究)を行ったものです。
Fertil Steril 2015; 104: 1419(カナダ)
要約:2009~2013年に、卵巣刺激で低反応の方356名(41歳未満、FSH 10~20 IU/L、AMH<0.1 ng/mL、AFC<9、過去の採卵でFSH製剤300単位の刺激により採卵キャンセルか卵胞数7個以下か採卵数4個以下の場合)を対象とし、ランダムにFSH製剤450単位群と600単位群の2群に分け、前方視的に検討しました。なお、2群とも前周期のCD20からesutrace 4mgを刺激開始まで服用し、GnRHa microdose flare-up法(ブセレリン0.05mg皮下注射1日2回)を用い、トリガーにはhCG 5000単位を使用しました。2群間の年齢、卵巣予備能、不妊原因、刺激日数、キャンセル率に有意差を認めませんでした。450単位群と600単位群はそれぞれ、成熟卵数(4個 vs. 4個)、受精率(62.4% vs. 57.0%)、妊娠反応陽性率(20.5% vs. 22.9%)、臨床妊娠率(16.4% vs. 18,3%)、着床率(29.8% vs. 30.4%)に有意差を認めませんでした。
解説:低反応の方に450単位と600単位のどちらがよいかについては、多くの議論がなされてきました。2013年にNIHは450単位を推奨したものの、米国では実際に450単位も600単位も使用されています。本論文はこのような背景のもとに行われました。本論文のRCT研究によると、FSH製剤450単位と600単位は同等であることを示しており、少ない量である450単位で十分であると結論付けています。
ひとつ問題点をあげるとすれば、本来低反応の方にはHMG製剤が有用なのですが、本論文ではFSH製剤を用いています。FSH製剤はHMG製剤と比べると極めて高額であり、その量が600単位にもなると、毎日の注射代だけで数万円になります。HMG製剤を用いた同様のRCT研究が望まれます。